今ではすっかり当たり前……バス接近表示やバスレーンを普及させた「都市新バス」の正体とは!?

今ではすっかり当たり前……バス接近表示やバスレーンを普及させた「都市新バス」の正体とは!?

 都市部における定時運行や利便性向上を図るため、今ではバス接近表示やバス専用レーン、停留所の上屋といった設備は珍しいものではない。ではこういったシステムは一体いつから、どんなことから始まったのだろうか?

文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(都市新バスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■バスを快適に利用してもらう工夫

グリーンシャトル用車両としては1台のみ製造された、三菱名古屋製造のエアロスターM(U-MP618K)
グリーンシャトル用車両としては1台のみ製造された、三菱名古屋製造のエアロスターM(U-MP618K)

 だが、少なくとも昭和時代まで、こうした設備は一般的とは言えず、時間になっても来る気配がないバスにイライラしたり、交通渋滞に巻き込まれたり、雨の日は吹きさらしの中、傘を差してバスを待つほかなかった。

 そんな旧態依然とした路線バスを改善しようと、ソフト・ハード両面において様々な試みが投入された、新時代のバスシステムが「都市新バス」だ。

 1988年、当時の運輸省(現国土交通省)が都市新バスについて、バス接近表示やバス専用レーン、停留所上屋などを整備し、居住性を向上した専用車両で運行するもの、という定義付けを行い、その上でこれらの運行システム全体を整備する事業とした。

 今回は、都内に運行されていた都市新バスを中心に、その変遷などをご紹介していこう。

■1970年代に始まったバスロケ

 バス接近表示、いわゆるバスロケーションシステムは、1978年には東京都ですでに導入され、その後名古屋でも都市基幹バスの運行が始まっている。

 当時の運輸省が定義した、都市新バスシステムを初めて導入した事業者の一つが都営バスで、1984年のことだった。

ハイバックシートや上部引き違い窓など、高級感のある仕様となったが、バンパーもメッキ仕上げだった
ハイバックシートや上部引き違い窓など、高級感のある仕様となったが、バンパーもメッキ仕上げだった

 渋谷駅~新橋駅間5.5kmの路線で、現在も運行されている都01系統だ。同じ年には、新潟でも都市新バスが運行を開始している。その後、名古屋や大阪などにも整備されていった。

 都市新バスは非常に好評で、東京や名古屋などの都市圏に採用された路線では、いずれも大幅に利用客が増加した。

 都内では、他に1986年から東急バスが都市新バスシステムに倣った「東急バス新交通システム」を、目黒駅を起点とする各路線へ導入している。

■見た目ですぐに分かった都市新バス

 都営バスは都市新バスとは別に、1982年にはバスロケーションシステムを早稲田営業所で導入していたが、これは単純に、従来の路線バスに位置情報を示す装置を組み合わせただけのものだ。

 運輸省の定めたより高度な基準に合わせ、従来の路線バスとは一線を画す、都市新バスという新しいシステムとして誕生したのが、渋谷営業所が管轄する都01系統だ。

グリーンシャトル仕様のエアロスターK後部。呉羽ボディらしいすっきりとした直線基調の車体が特徴
グリーンシャトル仕様のエアロスターK後部。呉羽ボディらしいすっきりとした直線基調の車体が特徴

 車両は三菱ふそう製を採用、当時の三菱ふそうはエアロスター誕生前のため、標準車両はいわゆる「ブルドッグ(B35型ボディ)」であった。

 ただし都01系統で使用する車両には専用車両が用意されることになり、三菱ふそうP-MP118Kに呉羽製の特注スケルトンボディを架装。

 このボディは、後に呉羽製エアロスター(エアロスターK)のベースになったとされる。車体デザイン以外にも、当時としては画期的な冷房を搭載したほか、掛け心地の良いハイバックシートや上部引き違い窓といった高級装備を採用。

 2番目の路線となる都02系統用車両からは、エアサス仕様を導入している。また行先表示をカラー化し、都市新バスについては一目で分かるようになっている。

初代グリーンシャトル用として誕生したP-MP118K。エアロスターのようなスケルトンボディが特徴だった
初代グリーンシャトル用として誕生したP-MP118K。エアロスターのようなスケルトンボディが特徴だった

 最初の路線である都01系統には、グリーンシャトルという愛称が付けられ、以降誕生する他の路線にもすべて、「グリーン~」という愛称が与えられている。

 1994年に開設された都08系統まで、8路線が運行されている。

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