最近はSNSでバスを職業として運転しているドライバーを運転手と呼ぶか運転士と呼ぶかについて楽しい議論が巻き起こっている。それぞれの立場で主張が異なるが正解はどれなのか考察してみよう。本稿には令和8年6月のバス占いが付録しているので同時に楽しんでいただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージであり本文とは直接関係ありません)
■運転士名称の総論
バス運転士の名称には現在多くの表現があり、どれが正解とは言いにくいのが現状である。件の「運転手」「運転士」の他にも、従前から使用されている「乗務員」や「バスドライバー」、あるいは特定の事業者が使用する「サービスプロバイダー」や「ハイウェイパイロット」までさまざまな表現が入り乱れている。
特定の企業がイメージアップのために定義した名称については他にはまったく浸透していないため、本稿では考察の対象とはしないが、事業者のイメージアップ戦略としては一定の評価はできる。一般名詞であるバスドライバーもあまり浸透していないような気がする。一般的な総称としてはチラホラ見かけるものの、一人称としてバスドライバーを名乗る人は皆無ではないだろうか。
最終的に残るのは「運転手」「運転士」そして「乗務員」だろうか。番外で国鉄が使用していた電報略号で「ウテシ」というのもある。これはマニアや内部の一部でしか通用しないだろうが、会話やSNSではたまに耳にする。また親しみを込めてまたは蔑称として両方の意味にとらえられる「運ちゃん」というのもあるが、口語でしか使用せず誤解を招く可能性があるので親しい人との会話にとどめておいた方が無難かもしれない。
■法令上は「運転者」?
まずは法令上の用語についてみてみよう。バスの運行について定めた法律は道路運送法である。その条文の中には「運転士」も「運転手」も一度も使用されていない。該当する用語として使用されているのは「運転者」である。実に20回も登場する。
よって、法令上の用語が正しいと定義するのであれば、正解は「運転者」ということになろう。しかしこれはあくまでもそう定義した場合であって、国語上の正解とは異なるだろう。言語は生き物であり、時代とともに変化し法令の表現や法律用語が常に正しいとは限らないからである。
■「乗務員」は便利?
乗務員という言葉は一人称から三人称にも、あるいは単数形でも複数形でもすべて「乗務員」で済むので便利である。現在では一般的な案内で使用することが多いようだ。例えばバス車内外での案内やポスターや掲示物では「乗務員」と記載することが多いようだ。
記者の場合は、一人称は「運転士」を使用するが、確かに営業上の案内では例えば運転士が交代するので乗車を少し待ってもらうときには「乗務員」を使用する。「乗務員交代しますのでご乗車は少しお待ちください」の例による。これは別に運転士でも運転手でもいいし、それこそ個人により表現は様々だが、記者が聞いている限りでは「乗務員」が最も多いようだ。
■事業者はどっち?
では最後に運転士と運転手について考察しよう。まずはそれぞれの立場から見てみよう。バス事業者がどちらを使用しているかだが、特定の表現を除いて公式に使用している割合について調べてみた。主要大手はほぼ「運転士」で統一されていた。一方で、中堅事業者や地域事業者にまで範囲を広げると、運転手を使用する事業者が見えてくる。全体としては概ね15%程度が運転手を使用している。また混在も散見された。
次に毎日新聞が行った2020年の調査によると、国民一般が使用する用語の割合について運転士が36.2%、運転手が46.2%、いずれも使うが16.4%で、運転手がやや優勢ながらもさほどの差異は認められなかった。なお、国土交通省やバス協会では運転士を標準的に使用している。





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