グルっと1周回ってくる公共交通機関の代表格といえば東京の山手線。そんな山手線とよく似たフィーリングの路線バスが沖縄で走っていた。
文・写真:中山修一
(本部半島線にまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■起点が終点!? 半島を回る路線バス
沖縄本島の北西寄り、地図で見ると左上のコブになっている部分を本部(もとぶ)半島と呼ぶ。この半島の公共交通機関には、那覇方面から来る高速バスをはじめ、一般路線バスも何路線か通っている。
その中で、沖縄バス/琉球バス交通が共同運行している「65番 本部半島線」という路線があり、こちらがちょっとユニークな運行スタイルを持っている。
本部半島の付け根部分に位置していて、特に規模の大きな街が広がっている名護のバスターミナルを起点にするのは、同地域を走る他の路線バスと同じ要領だ。
ところが65番の場合、海岸線寄りの道を通りながら、半島を1周してまた名護バスターミナルに戻ってくる、起点と終点が同じバスであるのが最大の特徴。
■このへんが山手線っぽい?
65番には経由地違いが4種類ほどあるが、基本部分の経路が周回型になっているところが、どことなく山手線を彷彿とさせる。
山手線の経路を地図上で見ると、某大型家電量販店の歌で「円い」イメージを抱くものの、実際のところは牡蠣の殻のような輪郭を描く。
ギザギザした牡蠣型のシルエットをしているのは65番の基本経路も同様(山手線のほうが若干細長く、尖っている)で、印象論ゆえ具体的にどうこうとは言いようがないものの、経路が描く形状的な類似性を見出せる。
A地点を出発してA地点まで戻ってくるバスの代表的な例に「循環バス」が挙げられ、起点/終点を除いて、同じところを2度通らずに走るタイプの循環バスも多々ある。
では、沖縄バス/琉球バスの本部半島線も循環バスの一種かと思いきや、大抵の循環バスは経路が一方通行であるのに対して、本部半島線は上り/下り便がそれぞれ出ているのが、ちょっと違うポイント。
外側の車線を走るものが65番、内側を走るものは66番と、進行方向ごとに系統番号を分けているのも興味深い点。「外回り/内回り」が存在しているとは、なんともフィーリングが山手線そっくり。
■電車並みの素早さ
山手線は1周34.5kmの距離がある。一方で本部半島の外周を回ると55.1kmと結構な長さだ。恐らく距離の問題で、一方通行の循環タイプでは、乗る場所によって利便性に難が生じてしまう。
そのため本部半島線に外回り/内回り(65番を本部方面、66番を今帰仁方面と呼ぶのがフォーマルらしい)が設定されているのかもしれない。
時間帯によるものの山手線は所要時間63分くらいで1周するので、平均速度32.9km/hといったところ。電車のほうが足が速いのは当然と言えるが、本部半島線は基本経路の55.1kmを107分で走る。
というこは平均速度は30.9km/h。一般路線バスの中では、なかなかどうして速い部類に入り、しかも山手線の30キロ台と同等のスピードとなれば、あながち大都会の電車に負けていない。
■ココだけは違います!!
あくまで65番/66番は名護→途中の停留所で降りることを前提にしている、と思われる。全便ではないが、バスの通る経由地に「美ら海水族館」の近くが含まれており、そちらへのアクセスが観光利用での主目的に思える。
とはいえ、起点から乗り続けて1周回ってくることも出来なくはなさそう。バスで名護→名護を完全に1周した場合の運賃は1,700円となっている。
なお、首都圏のJR線には、乗る際に隣の駅で降りるつもりで切符を買って、同じ駅を2回通らない限りは、大回りをしてきても初乗り運賃でOKな特例があり、それは山手線でも使える。
当然ながらこの路線バスにそのような特別扱いは想定されておらず、ココだけは山手線と全然違うので念のため。
距離に応じて運賃が上がっていくタイプで、名護から乗って半島を回り、終点の1つ手前で降りてもシッカリ乗った分だけ運賃が必要だ。
また、本数も名護発で65番が6時〜19時台に13本、66番が6〜20時台まで14本と、場所柄手堅くローカル路線バスしている。
運行スタイル的には雰囲気が凄く似ている反面、運賃とダイヤ的には3分待つと来る山手線とは別世界の乗り物、といったところか。
本部半島には見どころやご当地系グルメが点在していて、一気に進まず小刻みに移動していくのも楽しい。本部半島線はそこまで本数が少ないわけでもなく、ある程度狙えばちゃんと機能してくれるので、現地を訪れた際の足代わりに選ぶのも有効な手段になる。
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