大勢の人々が行き交う那覇とは対照的に、沖縄本島の北部は人口が希薄で、それに伴い公共の足も非常に細いため、レンタカーなしで観光するのはちょっと(どころじゃないほどの?)工夫が要りそう。
文・写真:中山修一
(沖縄北部の実証事業バスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■沖縄で5番目に広い市町村
沖縄本島北部の突端部分は「国頭村」という場所にあたる。国に頭と書いて「くにがみ」と読ませる、沖縄難読地名の一つだ。なお村は「そん」と読むのがフォーマルらしい。
国頭村の面積を見ると194.8平方キロメートルある。那覇市が39.6平方キロであるのを引き合いに出せば結構広い。
他の都道府県で国頭村に最も近い面積を擁している例に、静岡県御殿場市(194.9平方キロ)と三重県鈴鹿市(194.5平方キロ)が挙げられる。
続いて1平方キロメートルあたりの人口密度を比べると、那覇市が約8,100人、御殿場市が約450人、鈴鹿市が約1,000人であった。国頭村は……24人である。
■交通不便地域における二次交通実証事業
数字が示す通り人口が希薄なエリアのため、同地は路線バスなどの公共交通機関が極めて細い。そうなると国頭村へ観光で行こうとする際、レンタカー必須なのか言えば……
……西側の海岸線沿いにある辺土名(へんとな)までは、30kmほど離れた名護から路線バスが出ていて、本数も極端に少ないわけでもないので、公共交通機関での村へのアクセス自体は可能。
しかし、バス移動がメインで困るのが辺土名から更に北、ちょうど沖縄本島最北端に位置する辺戸岬(へどみさき)へ行こうとしたり、そこを経由して東側の海岸線沿いに抜けつつ南下したい場合。
辺土名〜最北端周辺と、東寄りのエリアへ向かう村営バスが2路線ほどあるものの、東寄りにバスの繋がっていない区間が存在するのと、本数が1日2本ずつのため、使いたくても気軽に使えないのが実情といったところ。
そういった国頭村の大変ハードな公共交通事情の中、「交通不便地域における二次交通実証事業」というものが2024年6月から行われている。2025年1月現在も運行しているのが「国頭村周遊バス」と呼ばれる乗り物だ。
■運賃不要の周遊バスだと?!
この「国頭村周遊バス」は、村内にある西側の観光拠点と言える道の駅を起点に、近くの滞在型リゾートホテルや、観光利用ができる各スポットに立ち寄りつつ、北部エリアを1周する形で、道の駅とホテルに戻ってくる循環タイプのバスだ。
1日4本の設定で経路は時計回り一方通行。誰でも予約不要で乗れて、通常の路線バスとほぼ同じ要領で利用できるが、運賃を取らないのが最大の見所。
国頭村をレンタカー/マイカーなしで訪問したなら、なかなかどうして魅力に映る。ただし火曜日と木曜日は運休するので、そこだけはチェックが欠かせない。
■路線バスみたいなシャトルバス?
国頭村の西側のホテルに宿泊して、翌日は月曜で時間もそれなりに取れたので、ひとつどんな乗り物なのか利用してみることにした。
泊まったホテルの前に周遊バスのバス停が置かれていて、ほぼドアtoドアだった。しかしこのバス停標識、工事用の立て看板と同じ形をしている。
各地でバス停標識の形をチェックするのが楽しみの一つであるが、工事用看板の応用は初めてな気がする。平均的なバス停に比べ、掲示部分が広いので非常に見やすい。
時刻通り、9:04にバスがやってきた。車両はマイクロバスの日野リエッセII。標準車両がこれのようで、水曜日の1・3便だけ中国製のEV小型路線車が使われるとのこと。
車体に「貸切」の文字が記されており、村が観光バスの事業者に委託して、専任の貸切車を借り上げて走らせているのが想像できる。
時刻が決まっていて誰でも乗れるのは路線バスと同じながら、貸切車を充当+運賃無料であるのを加味すると、バスのジャンルとしてはシャトルバスに近いかも。
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