バスが曲がるときにいちいち停止するのがウザいだと？　見えないから停まるしかないんですってば!!

　バスが右左折時に横断歩道前で一時停止しているのを見かけることがある。トロいとか、邪魔だとか、遅いとか色々と言われるが、見えないから仕方がない面もあるのだ。そのあたりをご理解いただき後ろに付けている乗用車の運転手は温かい目で見守っていただきたい。

文／写真:古川智規（バスマガジン編集部）
取材協力：フジエクスプレス・富士急行
（写真はすべてイメージで本文とは直接関係ありません）

■一時停止するかどうかは事業者のルールによる

　実際に右左折時に横断歩道の前で必ず一時停止するかどうかは、事業者のルールによるので必ずどのバスもしているわけではない。一時停止を義務付けていない事業差では運転士の判断に委ねられるのだろうが、バスでは確認すべき範囲が広すぎて、法律上は必要ない場所でもせざるを得ない場合もあるのだ。

　左折時に左巻き込み防止のために歩行者や自転車、あるいは二輪車がいないかどうかの確認は主に左前のミラーによって行う。当然ながら他の交通があれば先に行かせる。いずれにせよすぐに停止できるように最徐行である。トロい理由の一つであるが、これは理解していただけるだろう。

　そして横断歩道に差し掛かった際に、横断歩道を渡る歩行者がいるかどうかは、左折前に確認はしているものの、そこまでに数秒経過しているので自転車や走ってくる歩行者までは、まだ見えていない可能性があるので、再度確認が必要なのだ。

■確認したいが見えない！

　横断歩道の右側からくる横断者は運転席から直接目視できるので、それほど時間はかからない。これは乗用車も同じだ。しかし左からやってくる横断者は運転席からはすでに曲がりかけたバスのミラーでは見えない。

　よって目視で確認することになるのだが、バスの幅は大型車で約2.5メートルもある。中型車でも2.3メートルだ。運転席から約2メートル先の車外左側の後方まで見ようと思うと、前ドアのガラス戸から最前列左側座席（いわゆるヲタ席）の窓付近までをのぞくしかない。

　少し身を乗り出して左横を確認するのであれば、もう停止して確認した方が早いということになる。ここが乗用車と異なるところで、運転席後ろの座席に座って左折時に左側を見てほしい。運転席よりも見にくいはずだが、乗用車とはまったく異なる景色であることがわかるだろう。

　この時点ではバス最後尾はまだ曲がり始めてもいない。車長は大型路線車では10.5メートルから11メートル、高速車や貸切車では12メートルもあるのだ。

■バスが左折するときはできれば近寄らないで！

　横断歩道で待っている歩行者が信号をフライングしてスタートを切っている、あるいは赤に変わってから悠々と歩いている姿を目撃するが、単に信号無視という道路交通法違反というだけではなく、命の危険があるのでやめていただきたい。

　昔はおまわりさんに厳重に注意されるだけだったのかもしれないが、今は歩行者でも警察官に現認され悪質だとキップを切られる可能性がある。しかも免許の必要な車両で違反した場合の青キップ（交通反則通告）の制度は歩行者には適用されないので、例外なく赤キップ（告知票）を交付される。

　反則金を仮納付したら刑事罰を受けることはなくすべての処理がおしまいの青キップとは異なり、赤キップは刑事処分の対象になるので、検察官の取り調べを受けて起訴され、裁判所が有罪判決を出すと2万円以下の罰金または科料に処される。赤キップの裏面はちゃんと略式命令による判決書の謄本になるように作られている。極端な話だが刑事罰で納付できないと、労役場に留置される。有罪が確定すれば交通違反とはいえ広義の前科である。

　赤信号を無視して刑事罰を受けるのは歩行者の責任で仕方がないが、相手がバイクや乗用車ならばいざ知らず、もし乗客を乗せたバスだったら11トンから17トンくらいの重量物が体に当たる。

　速度に関係なく、どうなるかはお分かりだろう。命あってのなんとやら。バスも一時停止するが、歩行者もバスが近づいててきたら信号現示に従い渡る意思がある場合を除くほかは、できれば近寄らないのが内輪差の危険も含めてお互いの安全のためでもあることも覚えておいていただきたい。