旅モノ企画ではどことなく双方よそよそしいのが電車とバス。たまには両者手を取り合う形で、電車/バスを交互に乗り継いでいったら最終的(96時間後)にどこへ辿りつけるのかを検証してみた4回目。最後にいたのは果たしてどこか!?
文・写真:中山修一
(電車バス交互乗り継ぎチャレンジのフッテージ写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■紀伊半島の熊野市駅から再開
神奈川県の横浜駅をスタート地点に、電車/バスを交互(船を挟むのは可)に乗り継いで西を目指し、横浜〜豊橋、豊橋〜鳥羽、鳥羽〜熊野市とコマを進めてきた4日目の朝。
前日は松阪駅から、日本有数の長距離一般路線バスにして、なんとも寂しいことに2025年3月に廃止が決まってしまった、三重交通の松阪熊野線(熊野古道ライン)で、紀伊半島の熊野市に来た。
そのため次はJR紀勢本線一択。非電化なので、普通列車を使うなら乗るのはディーゼルカーあるが、特急だと使っているハイブリッド車両の形式的にはモハクモハなので“電車”になるという、車両で路線の見方が変わるちょっとユニークな区間だ。
もっとも、交互乗り継ぎルール的に「電車」は鉄道の慣用表現であるゆえ、ディーゼルでも客レでも構わないのだけれど。
■海に沿うか、山を突っ切るか
さて、紀伊半島の南部といえば、日本で最も長い距離を走る、高速道路を通らない一般タイプの路線バス・奈良交通「八木新宮線」が、約23km先の新宮駅前から出ている。
それを使って奈良方面に抜けるか、それとも電車で海沿いをトレースしながら若干距離を稼いでみるか……あんまり来られない場所だけに究極の選択。
その日は何となく海な気がして、そそくさと「WESTER」のアプリを開いて、新宮始発の特急「くろしお」で進む算段に落ち着いた。
■足が選べる紀伊半島の端っこ
熊野市をJR線で出て、新宮からまた電車に乗るとなれば、どこかでバスを挟まないとルール的にミッション失敗になってしまう。
実は熊野市〜新宮〜紀伊勝浦のあたりには、本数こそローカルの極みにせよ、同じ方面を目指す電車/バスどちらも通っていて、古き良き時代の選べる公共交通網がまだ何とか健在だったりする。
新宮駅までは、これまた貴重な県境を越える路線バスでもある、三重交通の「熊野新宮線」が紀勢本線に並走しており、どこかで電車を降りて、そのバスに乗り換えればルール上問題ない。
まず9:51熊野市発の普通列車に乗った。降りるとすれば、新宮の一つ手前の鵜殿(うどの)か、もう一つ前の紀伊井田のいずれかが丁度良さそう。
熊野市→紀伊井田、熊野市→鵜殿ともに運賃が同じ330円なので、紙のきっぷでギリギリまで吟味できる。ちょっと列車が途中で遅れたようで、よりバスへの乗り換え時間が稼げる鵜殿で下車した。
鵜殿駅のすぐそばに三重交通のバス停(鵜殿駅前)が置かれていて乗り換えは簡単。バスのほうも遅れていて、13分くらい待った。
やって来たバス車両を見ると、車体に「熊野古道ライン」と書かれた、松阪熊野線用のハイブリッド車だった。運用の都合で他の系統に入ることもあるらしい。
■あそこ渡っとくか?
バスで県境を越えて和歌山県に入った。次の特急「くろしお」に乗れば、紀伊半島沿いにかなり長い距離を直通できてしまう。問題はそのサジ加減であるが……。
新宮発なら進行方向左側、国内有数のオーシャンビューが広がる鉄道線をスルスルと進みながら、特に何を考えるでもなく景色を眺めて約3時間、降りたのは和歌山駅だ。
JRの和歌山駅から和歌山バスに乗り、数キロ離れた南海の和歌山市駅に移動。また電車ターンであるが、和歌山市駅からは、世にも珍しいフェリー乗り場の前まで行く、距離短くも味濃いめの電車・和歌山港線が出ている。西の方へ来ると線路いっぱいあって楽しいな。
和歌山港駅を発着するのは南海フェリーだ。存在だけは気になっていたものの、なかなか乗る機会が得られなかったので、このさい試してみようと考えた。
熊野市を出発して割とトントン拍子に乗り継ぎができ、2〜3時間おきのフェリーにもまたキレイに繋がってくれて、うまくできてるもんだな、と感心した。
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