公共交通機関として、路線バスは欠かせない存在だ。大都市から中小地方都市、田舎の村まで、バスは最もベーシックな市民生活の足として、全世界で親しまれている。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、ヨーロッパのダブルデッカーバスほか各種の写真があります)
■ 柔軟性の高さこそバスの利点
他の交通機関と比較したバスの最大の利点は、そのフレキシビリティにある。大都市圏の大量輸送はもちろん、トラムが建設困難な細い路地や、急勾配のある坂の町など、あらゆる条件下で運行を可能としている。
各バスメーカーの製品ラインナップも、輸送量に合わせて大型車から小型のマイクロバスまで、様々なタイプが用意されている。
また他の交通機関のように、運行するために線路などのインフラを整備する必要はなく、すぐに開業することもできる。
近年は排気ガスの問題が指摘されているが、低公害エンジンやハイブリッド式、あるいはバッテリーによる充電式などが開発され、問題は解消されつつある。
■路線バスの短所を解消
とはいえ、バスにも短所がないわけではない。その一つが輸送能力だ。
トラムや地下鉄など、他の交通機関は複数の車両を連結し、数百人という多くの乗客を輸送することが可能だが、一般的なバスの場合、どんなに詰め込んでも100~120人が限界といったところだ。
地方都市であれば十分なキャパシティだが、都市の規模が大きくなればなるほど、バスはその都市の交通機関の主役とはならず、フィーダー輸送などサポート役に回ることになる。
ただし、地下鉄やトラムを建設することが難しく、どうしてもバスに頼らなければならない地域もある。
あるいはフィーダー輸送ながら、郊外の地下鉄やトラムの駅から近隣の団地まで運行されているような路線も、やはり多くの利用客があり、バス1台ではカバーしきれないことも多い。
こうした輸送力の問題を少しでも解消しようと誕生したのが、ダブルデッカー(2階建て)や連節車だ。
いずれも説明は不要だろうが、ダブルデッカーは2階建てとすることで縦方向に床面積を広げ、一方の連節車は2車体とすることで前後方向に広げた。
2倍とまでは行かないが、一般的な路線バスと比較して、おおよそ1.5~1.8倍くらい収容能力が増える。
■一般的なのは連節車
ではどちらの方が、より一般的と言えるのだろうか。
ヨーロッパ地域で見てみると、連節車を使っている都市の方が圧倒的に多く、ダブルデッカーを都市部路線用として使っているのは、ロンドンを筆頭とした英国と、ドイツのベルリンくらいだろうか。
1970年代には、イタリアでもダブルデッカーの試作車が作られたが、結局どこの都市でも採用はされず、連節車が採用された。英国とベルリンだけが、少々特殊と言えるかもしれない。
それぞれ、どんな特徴があるのだろうか。ダブルデッカーは、高さ以外の全長などは一般的な路線車両とほぼ変わらないため、運転の取り回しに苦労することはあまり無い。
ただし気を付けなければならないのは、車高が極端に高いため、回送や臨時などで通常の路線ルート以外を通行する際、高さ制限に十分注意を払う必要がある。
まさかと思うかもしれないが、数年に1回はガードやトンネルに激突して、2回屋根部分が大破する…という事故をニュースで見かける。
2階席への出入りが細い階段で、乗降に時間が掛かるという点もデメリットとして挙げられる。
一方の連節車は、高さ方向への制約がないので、基本的には特に気にすることもなく、一般的なバスが通行できる道路はほぼ運行可能だ。
車体全長は、2車体合わせて18mというサイズが一般的で、ドアの数を3~5つと設けることができるため、運転手が運賃収受を行わないヨーロッパの多くの路線バスでは、乗降時間の短縮に寄与している。
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