かつて、朝の寒い教室を温めてくれたのは石炭ストーブ。みんなを乗せて走った汽車の燃料も石炭。多くの石炭を産出し、深い真っ暗な深度で炭鉱で働く人々が縁の下の力持ちとなって日本を支えたのが夕張市だ。ここから札幌駅とを結ぶ長距離バスが走っていた。
●夕張号
○ルート:夕張レースイリゾート〜札幌駅
○運行会社:北海道中央バス
○乗車・撮影:2024年8月
(記事の内容は、2026年3月現在のものです)
執筆・写真/石川正臣
※2026年3月発売《バスマガジンvol.132》『思い出の長距離バス』より
■札幌までの直通便はなかったが新夕張駅は新しい玄関口だ
夕張から、北海道道庁がある札幌まで直通の交通機関はなかったが、高速バスの発達によって夕張号が登場した。すでに人口減少が進んでおり、夕張号の期待は高かった。
新しい夕張への玄関口には、道東へと向かうJR石勝線に新夕張駅が開業し、中心地へは夕張鉄道(夕張バス)が運行開始した。
便利になったものだと乗車してみると、走行ルートは山林を切り開いて貫通させた、通称夕張街道国道452号線だ。夕張川沿いを走り中心部が近づくと、廃屋となった炭鉱住宅を市内いたるところで見られた。
学校は市内の小・中・高を各一校ずつに統合され、その小学校前では将来の夕張を支える小学生が乗ってきて、車内はやっとにぎやかになった。
先生がバス停まで見送り、乗務員に挨拶して走りだす際に手を振る姿は、地方のバス停ではよく見かける光景となった。メロン畑も広がるそこに、新しい夕張の景色を見た気がした。
■札幌行き高速バスに乗り若草が広がる北海道の大地を行く
札幌行きバスに乗車するため、路線起点の「レースイリゾート」へ向かう。ここは立派なホテルとスキー場があるレジャー施設。空間に余裕がある広大な敷地で乗り場を探すと、2本のバス停ポールを見つけた。
夕鉄バスと中央バス、中央バスには札幌行きと岩見沢行きがあったが、両路線ともに路線廃止のお知らせ案内が掲げられていてガッカリした。
市内線夕鉄の路線バスがやって来たその3分後に、札幌行きが到着。市内中心部へ向かったが、夕鉄バス本社では3分前に出た路線バスに追いついた。
夕張市を出るとトウモロコシ畑、そしてタマネギが畑に横たわっている。地元名産のタマネギの収穫時期であったため、実った姿が車窓に広がる。そんな景色が続いた後、栗山の町に入り込む。
細かく停まれば乗って来る人も徐々に増えて車内は活気づく。その後に高速道路を目指す。夕張からは一般道を走行してきたが長い直線路で、豊かな若草色が広がる農道を走るのは、実に北海道らしいなと思いながら江別市へと向かう。
■札幌までの道のりは遠くないが夕張からの乗車は少ない
江別東インターから道央自動車道となり、ついに高速入り。ジャガイモ畑が広がるのも北海道らしいが、徐々に家屋が増えてくる。札幌ジャンクションから高速を降りて札幌市内へと入る。
陽も傾き始め、豊平川に映る夕陽も美しく、市内線バスは帰宅者で混み合ってきた。また札幌を発車して道内各地へと向かう中央バスの高速車も次々とすれ違う。
こちらは降車客が徐々に多くなり、中心部が近くなるにつれ帰宅する人の足早な姿が目につく。バスはビル街に入り込み、時計台バス停で降りる人はさすがに多く、そして終点札幌駅に到着。
到着を迎えてくれたのは待ち合わせた知人だろうか、笑顔を交わす姿もほほえましいが、次々と到着するバスもまたほほえましく感じた。降りた乗客たちは混雑気味のクルマと歩行者がざわめく街の中に溶け込んで消えて行った。
大赤字に悩んだJR夕張線に次いで、岩見沢行き路線バスと高速夕張号の廃止は人口の減少を進めて行くのだろうか。今後は夕張へ向かう道の玄関口は新夕張駅になっていくだろう。
【画像ギャラリー】かつて炭鉱で栄えた夕張の街をゆく……北海道中央バス「夕張号」で走る新しい夕張の景色(12枚)画像ギャラリー















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