奈良県内全域と京都府の一部に路線を展開する「奈良交通」の特徴や保有するバスについてお伝えしているバス潜入レポートもいよいよ3回目となった。今回は奈良交通ならではの長距離路線をご紹介したい。
奈良県橿原市の近鉄大和八木駅と和歌山県新宮市のJR新宮駅を結ぶ八木新宮特急バスは、全長166.9km、停留所数167、全線運賃5,250円(2019年10月の消費税率引き上げに伴い運賃改訂申請中)という長大路線。高速道路を使わない路線としては、日本一の長距離バスである。
ダイヤは大和八木駅発9時15分、11時45分、13時45分、新宮駅発5時53分、7時46分、9時59分の3往復。途中3回のトイレ休憩を含め、全線の所要時間はおよそ6時間半に及ぶ。
今回は「168バスハイク乗車券」を購入して大和八木駅を出発。上野地での休憩、十津川村役場と本宮大社前での途中下車を活用し、国内随一の吊り橋、素朴な山の温泉、世界遺産の古社に立ち寄る、およそ11時間の旅を紹介する。
構成・執筆・写真/加藤佳一(B.J.エディターズ)
写真協力/(K)柏田芳敬、(H)編集部、(N)奈良交通株式会社
※2019年7月発売「バスマガジンVol.96」より
【画像ギャラリー】奈良交通が所有するバスをイッキ見! バス会社潜入レポート 奈良交通【一般路線車編 パート2】
■車両メーカーは日野製が7割
路線車には市街地用と郊外用
奈良交通とエヌシーバスを合わせた2019年3月31日現在の保有車両数は、乗合667台(高速車20台、定観車4台含む)、貸切128台、計803台である。
メーカー別に見ると、日野486台、いすゞ295台、トヨタ8台、三菱ふそう7台、日産4台、スカニア2台、日産ディーゼル1台で、近鉄グループの事業者らしく日野車が約6割を占めるが、いすゞ車の比率も高い点が特徴である。
一般路線車の主力は長尺大型車で、ツーステップ時代は市街地に3扉車、郊外に前後扉車を運用。ワンステップバス導入後は市街地に前中4枚折戸、郊外に前中引戸を採用している。
08~09年には少数ながら、近鉄バスから前後扉の大型車・中型車を中古購入。郊外線に投入している。11年からは中間尺ノンステップバスが標準となり、市街地用と郊外用の差異は、乗降方式の違いに合わせた側面表示器の位置のみとなっている。
なお、奈良市内線には14年からハイブリッドノンステップバスを導入。けいはんな学研都市では17年にスカニア製連節バスが活躍を開始した。また、八木新宮線には高出力・短尺の前扉車を専用してきたが、15年から短尺ノンステップバスに置き換えられている。
狭隘路線などに投入された9m尺大型車に代わり、00年から中型ワンステップバスの増備を開始。05年にはCNGノンステップバスが採用され、09年からはノンステップバスが主力となった。
並行して郊外には7m尺の中型ワンステップバス・ノンステップバス、市街地には10・5m尺の中型ノンステップバスも導入されている。
閑散路線などには小型車が使用され、日野リエッセ・ポンチョが多数在籍。これら小型車と7m尺中型車の一部の運行は、エヌシーバスに委託・移管されている。