古き良き、高速バスが百花繚乱だった時代のルートや車両をアーカイブ記事として紹介するこのコーナー。今回は首都圏と関西を結ぶ長距離バスだ。
1988年の新宿便、特急やまと号に始まる奈良交通の高速路線。翌89年には同じ新宿行きに近鉄高田駅発便、福岡便、そして横浜、大宮、千葉と東京隣接3県へと新規開業し、夜行は6路線となった。
●データ[やまと号運行の変遷]
・近鉄奈良駅〜小倉駅前〜福岡天神 (全線廃止)
・近鉄奈良駅〜新宿駅〜京王プラザホテル(既存)
・五条バスセンター(延長区間)〜近鉄高田駅〜新宿駅―京王プラザホテル(既存)
・五位堂駅〜王寺駅〜法隆寺(延長区間)〜近鉄奈良駅〜横浜〜上大岡駅〜本郷車庫(千葉線と合併。奈良〜横浜は千葉線となる)
・学研都市田辺〜学研都市精華(延長区間)〜近鉄奈良駅〜西船橋駅〜東京ディズニーランド(横浜線と合併。奈良側廃止して横浜線を引き継ぐ)
・生駒駅〜学園前駅〜高の原駅(延長区間)〜近鉄奈良駅〜川口駅〜浦和駅〜大宮駅
執筆/写真:石川正臣
※2016年9月発売「バスマガジンVol.79」より
【画像ギャラリー】当時の運行料金表も紹介!! 大宮を東の拠点に生駒〜奈良を繋いだ「特急やまと号」
大阪屈指のベッドタウンと埼玉県の大宮とを結ぶ
1980年代の終わりころ、奈良交通の路線バスに乗車すると、車内放送の停留所案内の後に「当社では夜行バスやまと号を九州福岡と首都圏の各地へ毎日運航しています」という宣伝が入るようになっていた。ほぼ1年でやまと号は大盛況の中でスタートした。
さらに1991年には近鉄高田発便は五条バスセンター発、横浜便は五位堂駅発、大宮便が生駒駅発、千葉便は学研都市田辺発と首都圏便はそれぞれ奈良発が延長され、県内に広範囲で首都圏への足が確保された。
大阪から奈良に向けて通勤電車を生駒駅で降りる。大阪のベットタウンでもあるが、駅前には山が迫まり、生駒ケーブルの乗り場と行楽地の玄関でもある。夕方のラッシュも終わって駅前が静かになったころに、埼玉(大宮)と表示したやまと号が着車した。
奈良市内でしか見なかったやまと号にここで乗車できるのもありがたいが、「なぜ大宮?東京は停まらないの」と目の前にいた地元の人が、ポツンと呟いていたのが印象的だった。