バスマガジン本誌で数回に渡って試乗インプレッションを紹介した、オノエンスターEV・10.5。最近全国で注目度の高い、大型の電気バスだ。すでに走行性能、快適性能は大満足の新世代のバス。
しかしあちこちにガソリンスタンドがあって、いつでも給油できる内燃機関のバスと違い、もっとも気になるのはその航続距離だ。
スペック表には明記されているが、なにしろ1台1台走行環境の違いの振り幅が大きい路線バス、「実際は何㎞走ったら電池がカラになる?」という素朴な疑問を解消すべく、バスマガジンとオノエンジニアリングがチームを組んで限界にチャレンジした。
文/近田茂、取材協力/オノエンジニアリング
【画像ギャラリー】路線バスだけど高速走行も超アップ&ダウンもメニューに入れてのチャレンジ!!
ホントに300kmも走れるのか!? 正直、全員が半信半疑だった
これまで導入されてきた内燃機関搭載のバスなら、長年の運行実績から、実用上どの程度の燃費率を達成するのか、事業主ならある程度の実態は把握できていることだろう。消費燃料の節約(削減)は資源や地球環境保全の観点からも注目すべきことで、そこへ取り組む姿勢表現という意味でもとても重要だ。
事業規模が大きければ大きいほど、そこに関わる経費節減効果が侮れないうえ、それらに取り組む企業姿勢をアピールでき、イメージアップに貢献できる好機が潜んでいることも見逃せないからだ。
たとえば軽油1Lで走れる距離が3kmだと仮定し、新型車の導入で3.3kmに伸びるとする。運行形態や事業規模にもよるが、10%の燃費向上が健全経営への舵取りに大きな影響をもたらす事は間違いない。
また大切な要素は燃費だけに限られる事ではなく、最優先される安全運行を始め乗客への快適性向上、ドライバー不足への対応、労働環境改善等、様々な複合的課題解決も考慮して行く必要がある。そんな現状下のいま、ドラスティックな改革案件のひとつとして業界が注目せざるを得なくなりつつあるのがEVバスの導入だ。
バス供給メーカーも導入事業社も、日本は既に熟成された業界で何かと保守的だが、中国では早くもEVバスが主流に切り替わり、EVバス先進国の様相を呈している。本誌既報のオノエンスターEVも中国製造のASIASTARを国内向けに仕上げて輸入販売を開始している。
今回実走テストした10.5mノンステップバスは、DANA製の液冷200kWモーターを搭載。最大トルクは2500Nmを発揮。最高速度は80㎞/h。リチウムイオンバッテリー8連のフル搭載で250km以上(エアコン未使用なら300km)の航続距離を誇る。
ただしこれらはメーカーから伝えられた、いわゆるカタログデータに過ぎない。実際に公道走行した場合、満充電で果たしてどれくらい走れるものなのか?
本誌でお馴染みオノエンジニアリング・小野社長のそんな想いと同様に、素朴な疑問を持つ本誌の共同企画から今回のテストは実施された。圏央道、東名、第二東名から富士山を巡り中央道で帰還するコース。果たして結果はいかに!?