バスのフロントガラスは乗用車と比べるとほぼ直立している。また面積も大きいのでワイパーの形状も大きさもまったく違う。
そんなバスのワイパーだが、昔から合掌型と呼ばれるタイプが多く採用されている。最近は下から腕が上がってくる形状のものもあるが、伝統的なのは真ん中で手を合わせるような形で停止している合掌型だ。これはなぜなのか?形状の違いを探ってみた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
秘密はガラスにあり!
バスで最も面積の大きいガラスはもちろん、正面のフロントガラスだ。ゆがみのない精度が高いガラスを作ることはかつては文明の発展度合いを示すバロメーターとまで言われた。
数十年前は海外旅行の際に「その国の工業技術を見るには住宅の窓ガラスを見ればよい」と教わったことがある。それほどゆがみのないクリアなガラスを大量生産するのはそれなりの技術を要した。
住宅用の窓ガラスでもそうなのだから、バスの大きな窓ガラスを作るのは大変で、高度な技術を要し当然ながら価格も高かった。
さらにガラスなので割れない保証はなく、事故等で割れても安全なように合わせガラス等の特殊ガラスを開発し続けてきたので、国を支えてきた工業分野では鉄鋼や自動車はもちろんだが、ガラス製造も重要な要素だった。
高いなら2枚を組み合わせてしまえ!
そこで技術的に難しくて価格の高いガラスを使うのであれば、真ん中で分割し2枚にしたほうが安くなる。そうすると中心部で2枚のガラスを接合することになるので、ワイパーを乗用車のように常時寝かせておくのではなく、ガラスの接合部に立てておけば良いという形状になった。
最近では技術的な障壁はなくなり価格も下がってきたので1枚ガラスのバスもハイデッカー車を中心に多く出てきているが、路線バスではまだまだ合掌型が主流だ。
2枚ガラスの場合、飛び石等で割れたりヒビが入ったときに1枚だけ交換すれば済むという利点がある。 つまり不測の事態が発生してもコストが低く抑えられるのだ。
とはいえハイデッカー車の下から大きな腕が左右同時に上がってくるあの大型ワイパーもカッコいい。雨の日にバスに乗車する際にはワイパーの動きをつぶさに観察して、乗用車との違いを探してみると面白いかもしれない。
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