2年おきの偶数年に、ドイツの首都ベルリンで「イノトランス(国際鉄道見本市)」が開催されている。実物の鉄道をテーマにした業界関係者向けイベントではあるが、鉄道と方向性がよく似た公共交通機関であるバスも展示されているのが見どころの一つだ。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(イノトランス会場内展示バス車両の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■バス関連では13社が出展!!
2024年も9月24日から27日にかけて行われた同イベント。世界最大級の鉄道見本市として有名で、世界中から多くの来場者が訪れる。
イノトランスが開催されるベルリン・メッセ会場の特徴は、広大なスペースに設けられた本線からの引き込み線で、実物の鉄道車両をそのまま展示できることだ。
ただ、展示されているのは鉄道製品だけではない。イノトランスには、バスメーカーも出展をしており、最新の実物車両を見ることが出来る。
2024年はメーカーや運行会社など、13社が出展を行っていたが、鉄道車両と異なるのは、バス展示場には周回コースがあって試乗することが出来るのだ。
展示されていた車両は、その大半がバッテリーによる電気バスかトロリーバス、または水素燃料バスで、ディーゼル車は見られなかった。
ディーゼルエンジンは、現代ではまだ必要な動力源ではあるものの、最新技術を展示するメッセ会場ではその姿を見ることは出来なかった。
■世界シェアトップのBYDが注目を集める
出展企業のうち、一番力を入れていたのは中国のBYDで、18m級連節車から小型の車両まで、4車種もの展示を行っていた。BYDは日本市場へも投入されているので、ご存知の方も多いだろう。
さすが、電気自動車の世界販売台数ではテスラを上回る第1位だけあって、乗用車だけではなく、バスのような大型車両も大きな注目を集めていた。
同じ中国の鉄道メーカーであるCRRCは、欧州市場への参入にかなり苦戦をしているが、BYDは比較的順調に参入を果たしている印象を受ける。
日本にも導入されている、Kシリーズと呼ばれる車種が有名であるが、展示されたのはBシリーズと呼ばれるモデルチェンジされた車両で、2020年から販売が始まっている。
Kシリーズのデザインは、中国製にありがちな、少々野暮ったさの残るデザインであったが、Bシリーズは奇をてらわないシンプルなデザインで、かなり洗練された印象を受けた。今後も多くの都市で見かけるようになるかもしれない。
■聞き慣れない名前から、懐かしい名前まで
久しぶりに見た名前が、1895年にハンガリーで創業した長い歴史を持つイカロスだ。
第二次大戦後の共産主義時代に、ソ連やその周辺国向けに多くの車両を輸出したメーカーとして記憶に刻まれている人も多いと思うが、共産主義の崩壊で多くの顧客が離れていき、いったんは命運が尽きた。
その後、イカロスのブランドは電気バスのメーカーとして甦った。展示されていたのは12m級の大型車(120e V4)と8.5m級の中型車(80e V4)で、展示は無かったが18m級連節車(180e)もラインナップに加わる予定となっている。
日本では、道路交通法により認可取得が必要となるが、海外ではその必要もなく、大都市では連節車の需要はかなり高い。
普段、見かけないメーカーの姿もあった。Arthurは、会社自体はドイツのミュンヘンに本社を置くが、工場はポーランドのルブリンにある。
水素とバッテリー、トロリーの中から地域に合ったオプションを選択できるラインナップで、それぞれ12m級大型車と18m級連節車が用意されている。バッテリー車両は、さらに小型の10m級中型ボディも用意されているようだ。
さらに珍しい、トルコのKarsanという会社も、小型の電気バスを展示した。メーカーそのものは、1966年創業と比較的長い歴史を持ち、他国メーカーのライセンス生産や特殊車両の製造・販売などを行っている。
展示された車両は、他メーカーの車両と比較して、さらに一回り小型のようで、フランスやスイス、北欧のほか、アメリカでもすでに運行されているようだ。
オランダのメーカーEbuscoも、電気バスの展示を行った。2012年に創業した若い会社だが、最初に製作したEbusco 1.0から年々進化し、会場では最新のEbusco 3.0が展示された。前モデルから33キロ軽量化、最大航続距離は500kmに達する。
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