架線から電気を拾ってゴムタイヤで走る「トロリーバス」。日本では殆ど使われなくなった公共交通機関ながら、海外に目を向けると、今もトロリーバスが新しくデビューを飾る国だってあるのだ!
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
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■開業したてのトロリーバス
2024年3月6日、チェコ共和国の首都プラハに新しいトロリーバス路線が開業した。プラハ市西郊に位置するプラハの玄関口、ヴァーツラフ・ハヴェル空港から、地下鉄A線ヴェレスラヴィーン駅の間を結ぶもので、同市に新規開業するものとしては2番目の路線となる。
使用される車両は、ソラリス(ポーランド)/シュコダ(チェコ)製で連接式。なんと3車体・全長約24.7mもある信じられないほど長〜い車だ。これにより既存の連接バスと比較して収容能力が25~30%も増加し、座席数や荷物置き場の数も増やした。
開業当日、お昼ごろにプラハ空港近くで開業記念式典が行われ、多数の報道陣が詰め掛けるなど注目を集めた。午後2時過ぎになると、待機していたトロリーバスが一斉に動き出した。
それまで運行していた通常のバス路線である「119番」と徐々に車両を入れ替え、新生「59番」として運行を開始した。日中の営業時間帯に、既存の路線を置き換える形で引き継ぐというのは珍しく、119番は多くのファンに見守られる形で営業運行を終了した。
■「エコ」が復活の味方に
プラハでは、実は約50年前までトロリーバスが運行されていた。しかしいずれも廃止され通常のディーゼル車へ転換されてしまった。ところが近年、環境問題が叫ばれるようになったことで、再び導入への機運が高まった。
まず市内東側の地下鉄駅から、郊外の団地へ向けた路線で試験運行を開始、その後正式に導入されることになった。トロリーバスの系統番号は、100番以降の番号が振られる通常のバス路線とは明確に分けられて、50番台が用いられるようで、最初に開業した路線には「58番」が与えられた。
次に白羽の矢が立ったのが、今回開業することになった空港方面の路線だ。プラハの空港アクセスはこれまで路線バスのみで、市内との間を結ぶ鉄道路線がなく、「一国の首都として恥ずかしい」と、これまで議会でもたびたび議論されてきた。
その長年の懸案事項を解決するべく、鉄道と地下鉄を同時に乗り入れさせる計画が進められているが、まだ具体的な工事も始まっていない状況で、当面はバスに頼らざるを得ない状況となっている。
そこで苦肉の策ではあるが、空港と地下鉄駅の間を結んでいる、前述した路線バス「119番」の区間にトロリーバスを導入する話が持ち上がった。
■輸送力に不安のあった空港アクセス
プラハ空港へは、プラハ中央駅からの直通急行バス1路線と、他に119番を含む3路線の通常路線が設定されているが、この中で地下鉄駅へ連絡する119番の利用者が最も多く、日中は2車体連接車が2~3分間隔で次々と発着を繰り返すほどであった。
ただ空港専用車というわけではないため、荷物置き場が多くあるわけではなく、座席数にも限りがあるため、空港輸送に適しているとは言い難かった。
一方で環境面へ目を向けると、大型連接バスを2~3分間隔で運行することによる環境破壊は無視することができず、今回のトロリーバスへの置き換えによって、年間でディーゼル燃料約69万リットルの節約、CO2約1850トンの排出削減に繋がると交通局は述べている。
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