在来バスを運用した「科学万博―つくば85」シャトルバス(連節じゃない方)の運行を国鉄監修時刻表から読み解く

在来バスを運用した「科学万博―つくば85」シャトルバス(連節じゃない方)の運行を国鉄監修時刻表から読み解く

 科学万博―つくば85は、人間・居住・環境と科学技術をテーマに、世界46か国と37の国際機関、28の民間グループが各パビリオンで近代科学の粋と夢を競った博覧会であった。1985年5月に発行された国鉄監修の時刻表には、科学万博とその交通についての案内が詳しく紹介されていた。

(記事の内容は、2022年5月現在のものです)
執筆・写真(特記を除く)/諸井泉(元シャトルバス中央事業所第6グループ運営管理者)
※2022年5月発売《バスマガジンvol.113》『日本を走った初めての連節バス』より

■駅前広場は未来を感じる「国鉄パビリオン」といえる空間だった

万博会場南ターミナルでの関東鉄道シャトルバス(写真:戸塚和夫)
万博会場南ターミナルでの関東鉄道シャトルバス(写真:戸塚和夫)

 科学万博への思いを巡らせて、都心からエキスポライナーに乗って万博中央駅に降り立つと、シンセサイザーでアレンジした「鉄道唱歌」のメロディーが流れ、万博会場へ向かう乗客を歓迎していた。

 ホームには「宇宙」「生活」「科学」の3つのゾーンがあり、高さ4m、幅30cmのイメージボードが眼を射るように立てられていた。また、構内2カ所に当時はまだ普及していなかったパソコン4台が設置され、科学万博を案内していた。

 駅前広場は大きなテントの曲線とワイヤーの直線が美しいコンポジションをなしており、まさに「国鉄パビリオン」といった様相であった。

 駅員は襟もとに濃紺のアクセントをつけたスカイブルーの制服を着用し、未来駅のイメージ作りにひと役買っていた。駅員の総数は約50名で、指揮を執っていたのが万博中央駅駅長の大高健次さんであった。

 大高さんは「ゴールデンウイークなどの超ピーク時には1日約20万人の乗降が見込まれるので、事故防止と楽しい雰囲気づくりに全力を尽くしたい。科学万博という世紀のイベントに携わる一員として、国鉄の歴史の1ページに残る仕事を心掛けたい」と抱負を語っていた。

万博会場北ターミナルでの関東鉄道シャトルバス(写真:戸塚和夫)
万博会場北ターミナルでの関東鉄道シャトルバス(写真:戸塚和夫)

 科学万博会場へのバス路線は、万博中央駅〜会場(北ゲート)間のスーパーシャトルバス(連節バス)がメインとなり、所要約20分、運賃は600円(こども300円)だった。

 万博中央駅発7:40~21:00、会場発8:10~21:30。3~10分ごとに運転されていた。ほかにも在来バスを利用したシャトルバスが運行されており次のルートがあった。

[1]土浦駅(常磐線)〜会場(北ゲート) 所要:約30分、運賃:600円(こども300円)。土浦駅発7:35~20:30、会場発8:15~21:30。3~10分毎に運転。

[2]牛久駅(常磐線)〜会場(北ゲート) 所要:約30分、運賃600円(こども300円)。牛久駅発7:40~20:33 会場発8:27~21:20 約15分毎に運転。

[3]水海道駅(関東鉄道)〜会場(西ゲート) 所要約30分、運賃600円(こども300円)、水海道駅発7:40~20:50、会場発8:20~21:30。約10~40分毎に運転。

[4]古河駅東口(東北本線)〜会場(西ゲート) 国鉄バス「エキスポ号」所要:約1時間20分、座席定員制。運賃:1200円(こども600円)+バス指定券200円(こども同額)。※表参照

古河駅東口発着エキスポ号の運行ダイヤ
古河駅東口発着エキスポ号の運行ダイヤ

 科学万博開催期間中、国鉄では各地からの臨時快速列車「エキスポライナー」を運行していたが、415系電車や電気機関車にけん引された12系客車、キハ58系気動車など様々な列車を見ることができ鉄道ファンを歓喜させた。

 バスにおいては連節バスの登場で一躍注目を集めることになったが、鉄道と比べるとバスファンと呼ばれる人たちはまだ圧倒的に少なかった。その中でも熱心にバスを追いかけていたのが乗り物写真家の戸塚和夫さんであった。

 戸塚さんは1949年東京都港区で生まれで、岩倉高校卒業後に当時の国鉄に入社、55歳まで駅職員として勤務した。戸塚さんは休みの日になるとよく鉄道写真を撮りに全国各地に出掛けていたようだが、駅前で発着する路線バスにも興味を抱くようになり、バスの写真も撮り続けていた。

 戸塚さんは病気のため68歳という若さで亡くなられたが、生涯に撮られたバスの写真は4万枚にも及ぶ。日本バス友の会ではその膨大な写真の中から写真を厳選し、「バスと歩んだ昭和~平成の駅前風景」という本でよみがえらせることができた。

 当連載ではスーパーシャトルの写真だけでなく、シャトルバスとして活躍していた在来バスの写真も使わせて頂いたが、1985年当時の資料とのコラボレーションによって記事を完成させることができ感慨深いものがあった。

【画像ギャラリー】1985年……まだ少なかったバスファンの中で熱心にシャトルバスを追った乗り物写真家・戸塚和夫氏の作品と記憶(8枚)画像ギャラリー

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