日付をまたいで移動する夜行高速バス。最近は3列シートを使用して快適度を高めたものが数多く見られる。その一方、従来の4列シートである代わりに運賃を抑えた“格安高速バス”もある。3列と4列、いったいどれほどの差があるのだろうか。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
■海外に比べるとまるで天国なニッポンの高速バス
2025年9月配信分の前回の筆者の記事で、新幹線など他の交通機関との運賃比較についてご紹介した。筆者は、いわゆる電鉄系や大手バス会社などの高速バスをよく利用している。
若かりし頃は、日本最長距離を走るとして有名な東京~福岡間の「はかた号」にもチャレンジしたことがあった。
2024年は、久しぶりに東京~姫路間の「プリンセスロード号」を利用してみたが、大きく倒れる3列独立シートは非常に快適、運転手のドライビングも安全で、睡眠も十分にとることができた。
一方で、筆者はチェコ共和国に在住している関係で、ヨーロッパの高速バスを利用することも多い。
こちらは薄っぺらい座布団の窮屈な4列座席に縛り付けられ、他車とのクラクションの応酬や高速道路でのフラフラとする運転は日常茶飯事。実際、多発する事故が問題となってニュースで報じられたことが何度もある。
乗車中は気が休まることなどなく、ほとんど休息が取れない苦行の後に残るのは睡眠不足と極度の疲労感のみ。まるで家畜のような扱いに嫌気がさしている身として、日本の高速バスは天国のように感じたものだった。
■4列夜行ってどうなの?
だが一般的な観光バスなどと同じ、ごく普通の4列座席を使った格安高速バスというのを日本では利用したことがない。普段利用していた大手高速バスと比較して、いったいどれほどの差があるのだろうか。
今回、東京から福島まで、ウィラーエクスプレスが運行する夜行高速バスを使って移動してみた。ウィラーの高速バスには、ラグジュアリーなものから格安のものまで何種類かの選択肢がある。
今回利用したのはエコノミーという観光バス型のシートのもので、2号車ということでウィラーの車両ではなく、委託先のニュープリンス観光という別会社の車両で運行されていた。
23時40分に東京駅前の東京ミッドタウン八重洲の地下2階にあるバスターミナルを出発し、途中新宿バスタを経由して、福島駅西口ロータリーには翌朝5時10分に到着するというダイヤだ。
このバスは仙台行きで、福島に停車した後は、そのまま仙台まで走る。WEB得プランという運賃を選べば、大人一人の金額はなんと2600円! JRの在来線運賃よりも安い金額で、これなら若者が飛びつくのも無理はない。
■好調な利用率
東京ミッドタウン八重洲のバスターミナルは初めての利用であったが、特に迷うこともなく辿り着けた。
23時半、地下のホームにはすでにバスが停車しており、乗務員へ予約メールを見せてすぐに乗車できた。乗車率は半分くらいであったが、新宿でも乗客を拾うので、もう少し増えるかもしれない。
4列座席は、すでにある程度リクライニングが倒されており、座るときに少々狭く感じるが、発車時間は午前様に近い時間、発車後に背後を気にしながら倒すことを考えれば、最初から倒してあるのはある意味で良心的と言える。
定刻に東京駅前を発車し、都内をゆっくり走行して新宿へ向かう。新宿では、空いていた座席がほぼ埋まるなど、日曜の夜であるにもかかわらず、バス2台でもほとんど席が埋まるほどの利用者がいるのは、かなり人気があることがうかがえる。
現地に早朝着ということで、到着後に仕事や学校へ行くことができるのも、利用者が多い理由かもしれない。
この路線は一人の乗務員だけが乗務している。夜間の一人乗務は大変とは思うが、運行距離は約370キロ、7時間半(いずれも仙台まで)。
そのため交代乗務員を用意する必要はない距離(昼間500キロ/夜間400キロ)の範疇内に収まっている。物腰の優しい、丁寧な案内放送が車内に流れ、まもなく車内は消灯となった。
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