最近耳にするバス+宅配輸送の「貨客混載バス」!! そもそもどこに貨物を積むの?

最近耳にするバス+宅配輸送の「貨客混載バス」!! そもそもどこに貨物を積むの?

 10年ほど前から、普通の路線バスに宅配便など小荷物を一緒に積んで走る「貨客混載バス」が一部地域で活躍したり実験・検討されたりする事例が目立つようになった気がする。しかし混載といえど、そもそもどこに貨物を積むのか……2025年に見かけた実車3パターンに注目!

文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、貨客混載バス各パターンの写真があります)

■貨物スペース(1):座席から専用スペースへ

群馬県の沼田エリアで活躍中の貨客混載バス
群馬県の沼田エリアで活躍中の貨客混載バス

 まずは、2025年6月時点に群馬県の沼田エリアで宅配便輸送を実施中だった、長さ10.5mクラスの大型路線車を使用した貨客混載バスの例から見ていこう。

 車種はいすゞエルガのワンステップ仕様車で、外からも有名宅配業者のロゴが確認でき、すぐに宅配輸送を兼任しているのがイメージできる。

 問題はピックアップした荷物の置き場所であるが、こちらは車両の中扉から前の、床が比較的フラットになっている部分を利用していた。

座席の一部を貨物置き場に転用
座席の一部を貨物置き場に転用

 同車の場合、車内通路を挟んで助手席側の一部座席を取り外し専用スペースに改装、そこに宅配業者が用意している配送ボックスを設置していた。なお最前面の1人席(通称ヲタシート)は座席が残り、そのまま使える模様。

■貨物スペース(2):元からある設備の活用

 続いては北海道の知床エリアでふと目に留まった貨客混載バスの例。該当の路線系統は一般道のみを走る路線バスであるが、高速バスとほぼ同じ長さ12mクラスでハイデッカータイプの、いすゞガーラが使われていた。

 途中、宅配業者の営業所のすぐそばに停留所があり、そこで宅配便の貨物の受け取りを行なっている様子が見て取れた。

北海道の知床エリアで見られる、ハイデッカー車を用いた貨客混載バス
北海道の知床エリアで見られる、ハイデッカー車を用いた貨客混載バス

 気になる貨物の収納場所であるが、ハイデッカー車に大抵は標準装備されている、床下のトランクルームが配送ボックス置き場を兼任していた。

 大型車のトランクルームの容量は宅配便貨物のボリュームでも余裕があるはず。元からある設備を使えば車両の加工改造がそれほど必要ない印象で、普段ハイデッカー車が充当される路線には効率のよい方法に思える。

■貨物スペース(3):まさかの荷物合造車!?

 3例目は北海道の帯広エリアで偶然出会った貨客混載バスを紹介しよう。10.5mクラスの大型路線車を使用したもので、車種は日野ブルーリボン・ノンステップ仕様。

 同車を外から見ると、中扉から後ろの床が2段高くなっている区画の窓すべてが、白いブラインドのようなもので覆われ車内が見えなくなっているほか、扉側の一部の窓を撤去して、代わりに大きな開閉式パネルが取り付けてある。

北海道の帯広エリアにはこんな混載バスが
北海道の帯広エリアにはこんな混載バスが

 実はこのブラインドで隠れた部分全てが宅配便の貨物置き場。車内にも仕切りが付いていて、感覚的には鉄道車両で言うところの荷物合造車に近い作りだ。

 今回紹介するパターンの中では、最も大掛かりな改造が必要と思われる相当ユニークなスタイルの貨客混載バスと言える。

中扉から後ろ全てを貨物スペースに改装した大胆なレイアウト
中扉から後ろ全てを貨物スペースに改装した大胆なレイアウト

 ただしこの合造タイプの大型路線車は、2020年代に実施された貨客混載バスの実証実験のために用意された性質が強いようで、2025年9月現在すでに貨物スペースは使われていないとのこと。

 車両本体は現在もそのまま帯広エリアの各一般路線で運用に入っている。かなり珍しい形態の車であるのは間違いないので、バス趣味の観点では一見の価値アリだ!

【画像ギャラリー】貨客混載パターンあれこれ(5枚)画像ギャラリー

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