人を乗せるための交通手段には旅客用の乗り物が使われる。ではそういった用途の車両などに、乗客が持ち込む手荷物ではない、いわゆる貨物の類を積むことはあるのだろうか?
文・写真(特記以外):中山修一
■貨客混載のディープな世界
人と貨物を一つの乗り物にまとめて運ぶことを「貨客混載」と言う。貨物の載せ方も乗客から見えないよう、客室や区画・車両などを分けたり、あるいは客室内に同居してもらう形を取ったりと、乗り物の種類によってまちまちだ。
人は人、貨物は貨物で別々に運んでしまうほうが好都合な印象を抱くが、人だけでは利用者の分母の数が少なすぎる、貨物に専任するほど物資の需要がない、あるいはその両方、となると話が変わる。
そんなハンデを抱えた条件下では、ちょうど間に合うくらいの人数が乗せられて、ほどよく物流まで担えてしまう貨客混載が最大の効果を発揮する。
その裏返しとして、人/貨物どちらか一方でも想定した分母の数を超えるとパンクしてしまうため、多すぎず少なすぎずデリケートなバランス調整が要求される。
■どんな乗り物で使われている?
日本国内で、特に多くの人々が利用しているはずの、貨客混載を行っている交通機関といえば、まず挙げられるのが飛行機だろう。あくまで人が乗るものなので旅客機という専用のジャンルが用意されているものの、一般貨物も普通に運んでいる。
最近はクルーズ客船のように船旅を楽しめるものが増えてきたカーフェリーも貨客混載の代表格だ。
剥き出しの荷物やコンテナ等を直接積み込むのではなく、大型トレーラーやトラック、バス、普通乗用車、バイクなど、地上を走る乗り物を「貨物」として扱うのが特徴だ。
JRの鉄道はどうだろうか。近年では、青い客車の寝台列車=ブルートレイン、または新幹線を使った貨物(小荷物)輸送サービスが最後まで残っていたが、いずれも廃止されている。
2023年現在のところ、新幹線のほうはサービス内容を刷新した、JR東日本による新幹線貨物輸送サービス「はこビュン Quick」として再登場している。
東北・上越・北陸新幹線での取り扱いがあるとのことで、実は新幹線も一部の列車で貨客混載を行っているわけだ。
また、実証実験を兼ねた貨客混載はJRや民鉄等さまざまな路線で試みが見られ、中には定期的に実施している区間も存在する。
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