■バスに貨客混載はありえるのか
続いて、飛行機や船・電車よりもずっとサイズが小さいバスの場合、貨客混載の概念をそのまま持ち込めるだろうか。
利用者と貨物の「分母の数」の課題は古くから思案のしどころだったようで、戦前に遡ると、いかにもなバス車両の記録が出てくる。
昭和初期、当時の鉄道省(のちの国鉄)が運行していた省営バスの、ややローカルな自動車線に、貨物用のトレーラー(無蓋車)を牽引できる、16人ほどが乗れるバス車両が投入されていた。
1940年発行の「省営自動車十年史」によれば、貨物トレーラー付きのバス、または貨物専用トラックで運ぶ2パターンがあったようだが、利用者が増えた路線での貨客混載は難しいとされている。
話を現代に戻すと、バスで貨客混載を行うこと自体が最近まで法律上できなかったのだ。路線バスに限り350kg未満ならOKの決まりがあったのだが、貸切バスやタクシーではNGだった。
2017年に法改正があり、適切な許可を得た上でなら、路線バスは350kg以上の貨物輸送が可能になり、貸切バスとタクシーは「過疎地域のみ」という条件付きで貨客混載ができるようになった。
2023年度にはさらに法改正の動きが見られ、過疎地域のみに限定されていた貸切バスとタクシーの縛りも解消される見込みだ。
ただし、路線バス、貸切バス、タクシーともに自由にどこへでも運送して良いわけではなく、許可を得たエリアに限られる。
■古くて新しい貨客混載の時代
法改正でバスの貨客混載が容易になった昨今、全国でどれくらい活用されたのだろうか。一般路線バスを対象に、実証実験や限定的な実施、定期的な運行を含めて軽く調べたところ……
・都営バス(奥多摩エリア)
・JRバス関東(安房地域〜館山駅〜館山市内)
・とよたおいでんバス稲武・足助線(足助病院〜どんぐりの里いなぶ)
・京都バス32系統(出町柳駅前〜広河原)
・たつの市コミュニティバス (市民病院〜はつらつセンター前)
・岩手県北バス (盛岡駅〜宮古駅/宮古駅〜重茂)
・神姫バス 81系統(三木市青山5丁目〜西神中央駅前)
・東急バス た41系統(たまプラーザ駅〜虹が丘営業所)
・宮崎交通(村所〜西都バスセンター)
……といった実績が見つかった。上記のほかにも実施している(していた)バス事業者はもっとあるハズだ。法改正にともない、今後もどんどん増えていくと予想される、バスの貨客混載が見逃せない!!
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