臨時運転士として訓練を続けるバスマガジン記者の奮闘記は空車教習を終えて営業教習に入る。初めて旅客を乗せて走る運転士は何を見るのか?第1日目をレポートする。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■仕業は? わかりません!
空車教習を終えて「次回からは営業教習に入ります!」と空車教習最終日の到着点呼で伝えられた記者は「どの仕業に入るのですか?」と恐る恐る聞いてみた。運行管理者の回答は「わかりません。前日に電話してください!」とのこと。正社員で概ね毎日運転するのであればスケジュールとして決まっているのだが、教育期間中の記者の場合は当月の内容がすべて決められているわけではない。
あくまでも訓練状況により最適な路線の仕業に入れるようだった。とはいえ教官となる運転士が入る仕業を記者が運転するだけなので、二人三脚で仕業を任されるということだ。
前日に電話して伝えられた仕業は新宿の企業契約輸送のシャトル便だった。出庫時刻は7時15分で入庫時刻は21時というロングラン仕業だ。7時15分は出庫時刻なので会社規定の出社時刻は6時55分である。とはいえ、やることは色々あるので、30分以上前には到着できるように逆算する。
■鬼教官だ!
営業教習の最初の3日間を担当する指導運転士は萱沼教官。運行管理者でもあり指導運転士でもあり超ベテラン運転士である。空車教習の時の教官から「萱沼さんか、厳しいよ。頑張ってくださいね」と脅されていた、どこにでも存在する鬼教官的存在らしい。
とはいえ、総じて鬼教官的存在の人は人間味あふれる方が多いのも事実なので、技を盗む気で挑めばよろしいと自分に言い聞かせる。短い挨拶をかわし、出庫前にやるべきことを済ませる。
■貸切なの?
記者が最初に担当する仕業の路線は、企業契約輸送でも2点間輸送だ。つまり途中の乗降場所はない。出発したら目的地まで直行する単純な路線である。しかし通常の路線バスと違う点も多い。この路線はダイヤがあり、時刻表通りに運行するのは路線バスと同じだが、貸切扱いなのだ。よって旅行や送迎で使用する貸切バスと同様に、運行指示書が交付され、これに従い運行する。
この路線ではスタフ(運転士用の時刻表)はあくまでも運行指示書を運転士用に見やすく書き換えたものと解しても過言ではないだろう。貸切扱いなので、地点・地点での実際のオドメーターの距離や発着時刻や休憩の有無をその都度書き込まなくてはならない面倒はある。
■出庫!
そのような面倒はあるが、旅客から運賃を収受しないので運賃箱が存在しない。よって現金やICカードの扱いをする必要はないし、放送装置の操作もない。ただし運転士がマイクで車内外での案内は行うものの2点間輸送なので放送は基本的に2回だけだ。
免許証と血圧、体温とアルコールチェックを終え、車両点検を行い、萱沼教官と出発点呼を受けて方向幕を回送表示にしていよいよ出庫だ。空車教習のように「教習車」のサボはもうない。港区芝浦から指定の経路で新宿に記者が運転をして回送する。
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