記者はこれまで、バスマガジン本誌、同webにおいてバス業界を外側から取材して記事にしてきたが、大型二種免許を持っていても実際に職業運転士をしたことがないのでわからないことが多いのも確かだ。そこで、バイト運転士でも採用してくれる港区のフジエクスプレスに選考試験を受けた結果、臨時運転士として入社したことは既報の通りである。本稿からはバス運転士日誌として一人前になれるかどうかを連載する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■入社日
4月1日入社と決まった記者は、当日の朝にフジエクスプレス東京営業所に出社して、まずは条件等を相互確認して雇用契約を締結する。法的には雇用契約が締結されてはじめて「出社」したと言えるが、すでに賃金計算は始まっている。免許証1枚のみを引っ提げて飛び込んだバス運転士の世界であるが、果たして一人前の運転士になれるのかどうか不安でしかない。
体験したことは記事にはするが、そんなことは乗客には関係ない。正社員であろうがバイトであろうが乗客からは運転士でしかないので、運転中は取材する記者モードから安全に輸送する運転士モードに切り替える必要がある。
当然だが雇用契約を締結した記者には正規の賃金が支払われる。次に就業規則の説明を受ける。正社員とパートタイム社員とでは若干異なるが、それは雇用体系由来の事項のみでほぼ正社員と同じものだった。当面使用する制服や社章、その他の支給品を受領して午前中は終了した。
午後は検査機関で適性検査を受けに向かった。これは貨物・旅客に限らず職業ドライバーとして就業するものは受けなければならないもので、これにかかる費用は検査当日に仮払いされた。交通費は数百円の電車賃なので自腹だと信じて疑わなかったのだが翌出社時に運行管理者に促されて請求し、当日に支払われた。このあたりは電鉄系バス事業者なので、会社規定によりきっちりしているようだ。
■気になる勤務形態は?
入社日は検査を受けて終了なのでそのまま帰宅した。ところでバイト運転士はどのような勤務形態になっているのかというと、実はまだよくわからないというのが事実である。理由は、研修期間中であるためだ。
富士急行(フジエクスプレスは富士急行グループのバス事業者)に限らず、どこのバス事業者でも同じだと思われるが、バスの運転士は運賃を収受して旅客の命を預かる職業である。よって、正社員であろうがバイトであろうが等しく同じ研修を受け安全に旅客を輸送できるようになるまで教育する。
よって訓練・教育にかかる手間とコストは正社員も契約社員もパートタイムも同じである。これは後日思い知らされることになるので別稿で詳しく述べるが、他の事業者が公式にはどれだけ運転してくれるのかわからない短時間のバイト運転士の募集に積極的でないように見える理由はこれなのだろうかとも感じた。
将来、一人で営業運転ができるようになれば、バイトの場合は勤務シフトは希望を言えるのだろう。しかし富士急行の場合は会社が定める一定期間内に独り立ちできないと解雇されてしまうので、それまではある程度は密に出勤して訓練を積まなければならない。これは事前に伝えられていたので承知の上でのことであり、また当然のことであろう。
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