■研修期間中の勤務形態
では実際に研修期間中の勤務形態はというと、運行管理者から希望を聞かれてその通りの出社日で訓練を受けることになった。勤務日程は、希望が100%反映されていた。乗客を乗せた仕業ではないので、ダイヤ等は考慮しなくて済むとしても指導教官がいなければ研修はできない。よって教官のスケジュールも記者の希望に合わせてくれた形である。
4月は山梨まで出向いて行われる教育期間を含めて18日間出勤するスケジュールにした。正業が記者であるため、平日も土休日にも訓練を入れた方が都合が良いのだが、その希望もすべて受け入れてくれた。なお、正社員の場合は月に8日の休みになるように平日をメインにシフトが組まれるようだ。
4月中にどれくらいの出社日数が必要なのかを運行管理者に聞いても、個人により習得に差があるので明確な基準があるはずもなく、「古川さんの努力次第ですので4月中の出社日を言ってもらえればそれに合わせてスケジュールを組みますので希望日数でいいですよ」とのことだった。それで結果的に合計18日となっただけであり、これよりも少なくても多くても教育のスケジュールは考えてくれるようだった。
■出発前にやる事
入社日の翌日から実車での訓練が始まった。午前9時までには血圧、体温、アルコール、運転免許証のチェックを受けて、当日に乗車するバスの点検を済ませてから出発点呼を受ける。もちろんだが免許証は会社に登録されており、ICを通じて有効期間等がチェックされる。アルコールチェックは警察の取り締まり基準よりもはるかに厳しいものだ。
バスの点検項目は多岐にわたるが、これも教育の一環なので出勤時には毎回行う。結論としては慣れるに従い自然に身に付くものなのだろう。もちろん手順は教えてもらい、覚える努力をする。
■実車1日目
点呼を終えると出発だ。訓練1日目は、営業所内でバスの取り回しや見た目ではおおよそ困難と思われるような挙動を要求され、とにかくバスを動かすことに専念する。しかし同じ人間の教官にできるものが記者にできないはずはないので、運転操作やバスの挙動を観察し、質問を通じて技術を習得し、実車で感覚をつかむことに努める。
教習所では試験に合格するために目印や場所で覚えることがあったと記憶しているが、こちらは実際に乗客を乗せるための訓練なので、何を見るべきなのかを教えてもらい、どの場所でも同様のことができるように努める。
ただし、営業所内で教官が作ったコースより難しい場面は実際の路線にはないということなので、最も難し課題で訓練を積んでおくという理屈なのかもしれない。そうすれば他の交通に注意を払わなくてはならない営業路線でバスの操縦で手一杯ということから多少は緩和されるのだろう。
ちなみにフジエクスプレスでは路線組と高速・貸切組とに分かれているが、バイトである臨時運転士は路線組しか選択できないので、当然ながら記者が高速バスに乗務することはない。この組分けは入社時に希望できる。同日入社の同期である正社員は高速・貸切組なので、訓練は2日目から異なる車両とメニューで行われた。
■路線車はオールAT車
コミュニティバスや企業契約による送迎バスを担当する路線組が運転する車両は、9メートルの中型車である日野レインボーと、小型の7メートル日野ポンチョである。高速・貸切組はこれに加えて12メートルの大型車である日野セレガほか同種のフルサイズバスで訓練を行う。
路線車はAT車しか在籍がないので、極論すればマニュアルトランスミッションの操作が苦手でも問題はない。しかし、後日の山梨で行われる富士急行グループの各バス事業者合同で行われる教育でAT車、マニュアル車それぞれのメリットやデメリットがあることを思い知らされることになる。
とはいえ、AT車の方が総じて運転操作は楽であることが多いのは確かだ。このようにバイト運転士としてスタートラインに立ったのだが、バス運転士の待遇が総じて低いのは承知の上である。しかしバス運転士不足問題の記事を書きながら、バスの運転と同様に運転士をしてみないと見えない「死角」の存在を感じてバイト運転士をすることにした。
もう一つの理由はバスに関する専門誌記者として、運転士をすることによる社会貢献の側面もある。報道機関が流すニュースはバスの減便・廃止ばかりで、その理由は運転士不足がほとんどだ。偉そうなことを言うようだが、バイトで限られた日数しか運転士はできないにせよ1路線でも、1便でも減便することなく路線とダイヤを維持できれば、わずかでも社会の役に立てれば良いと考えている。
以前にフジエクスプレスが希望した取材を受け入れてくれた際に記者が発した「バイトでも採用するのか」という質問が契機となり、同社で運転士をすることになったのだ。次回は最初期の空車教習の模様をお伝えする。
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