いわゆる普通の路線バスに使われる車両のうち、車体幅およそ2.5m・長さ10.5mクラスの車を一括りに大型路線車と呼んだりするが、実は同型車種でも長さの異なるバリエーションが何種類か用意されている。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、各長さの大型路線車の側面写真があります)
■ニーズに応じた車体の長さ
各メーカーや車種ごとに具体的な数値がそれぞれ異なるため、これといった基準値はないものの、最近広く使われている現役の車で、特注品ではないノーマルな大型路線車を長さ別に分けるとすれば、感覚的には「短・中・長」の3種類といったところ。
同じ大型なのに何故長さの違うモデルがあるのかは、バス事業者のニーズに応えるのが主な理由のはず。
例えば、それなりに利用があって、ある程度の本数を確保している路線で使うなら、取り回しが安定していて標準的な「中」の車を多数用意して対応。
利用はあるものの本数が少ない路線で走らせる場合、1回の輸送力に余裕を持たせるため、定員が多めな「長」の車を必要最低限の数だけ……といった要領で選べる。
■どの部分が短く/長くなる?
最近の一般的な大型路線車では、最も短いものが10.25m程度、最長が11.45m程度までで、大体10m台前半〜11m台前半の間。
では、車両本体のどの部分を短く/長くするのか……これは前輪と後輪の中心間、ホイールベースを調整するのがどのメーカーもほぼ共通と言える。
やや趣味・専門的な見方では、どちらかと言えば車体の長さよりも、ホイールベースの数値を基準にバリエーション分けすることが多いようだ。
ホイールベースの数値を見ると、こちらも車種ごとにバラバラなので、どうしても目安になってしまうが、最短4.8〜最長6mくらいの開きがあり、標準タイプ(中)に相当するものが5.3m前後と言える。
最短タイプと最長タイプとでは外見が大きく異なり、11m超のタイプは物凄く長い印象で、同じ車種ながらまるで別物のように感じるところが楽しい。
■長さが違うと何が変わる?
続いて、車体(ホイールベース)の長さが違うと、見た目のほかに何が変わるのか……利用者側から見て深く関係してくる部分は定員だ。
基本的に長い方がたくさん乗れるのは見た通りそのままな感じで、ざっくりした目安として、車体の長さ10m台と11m台の車とで、最大定員が10名程度変わる。
長さ10.25mの車の定員が76名なのに対して、10.75mの車は80名、11.45mの車は86名といった具合。
ただしこれも都市型や郊外型など車内設備(シートの種類)によって定員が増減するので、11m超の車でももっと定員が少ないケースは十分考えられる。
■設備面では何が違う?
さらに、短い車と長い車とで、車内設備のどのあたりが違うのだろうか? 特に大きく変わるとすれば座席配置(数)になりそうだ。
では車内のどのエリアの座席が変化するのか、カタログ寸法図や実車で考察してみよう。まず現在のバリアフリー対応車の、中扉から後ろの段になっているエリアに注目。
大型路線車の中扉より後ろの座席は「縦5列」の配置(通路を挟んで助手席側のみ縦4列の車もある)がポピュラーで、車体長が異なる同型車種でも同エリアは5列固定となっており、特に変化しない模様。
よくよくチェックしてみると、長さはホイールベースで調整するということで、ちょうどホイールベース間に位置している低床エリアの座席配置がちょっと異なるのに気付いた。
最前列のタイヤハウスの上(通称ヲタシート)を除き、特に運転席側の列の座席数に目立った差異が見られ、長さ10m台の車が縦4列なのに対して、11m台の車は縦5列または6列であった。
また、最も短いホイールベース4.8mの車と、標準的な5.3mの車とで、低床エリアの運転席側シート配列はどちらも縦4列。50cmほど長さに違いがあるもののシート配列が同じだったのは意外。
短いモデルにどうやってシートを設置しているのか、気になって寸法図を凝視してみると、それほど難しいことはなく、ホイールベースが短い車のほうはシートピッチを少し狭めることで対応していた。
【画像ギャラリー】大型路線車の長さと車内設備(7枚)画像ギャラリー













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