路線バスの、ある一つの路線系統に使われている車両に注目すると、その路線系統向けの専任の車が指定されているパターンもあれば、それほど車を選ばず……な場合もある。今回は後者から、何度か乗ってみて車種ラインナップが意外と具沢山なのでは? と気付いたあるバス路線とその車にクローズアップ。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に道北バス名寄線各車の写真があります)
■道北バスの「名寄線」
北海道の旭川〜名寄の間には、JR線のほか道北バスが運行する路線バス「2・3番 名寄線」が通っている。
最近は珍しくなってきた、鉄道線に並行して走る競合系の路線で、旭川駅前〜名寄駅前間83.8kmの距離を2時間40分前後で結ぶ長距離ランナーだ。
最初にお試しで利用してみた際、長い距離、長い時間、景色のバラエティ豊かな経路に加え、全区間1,320円という距離に対してお得感の大きい運賃設定と、なかなか好印象を持ち、この1度と言わずまた乗りに来ようと思った。
合わせて3回ほど利用してみて、気付いたのが使われている車両のラインナップだった。いずれも幅2.5m・長さ10.5mクラスの大型路線車ではあるが、車種的にはバラバラな様子。
バスを楽しむにあたって、車種の具沢山さはオイシイ要素ばかり。ここでは、それぞれ乗車時に現れた車両の簡単なプロファイルを見ていこう。
■1回目の乗車:車齢20年オーバーの準・旧車
初回は2023年11月、旭川駅前→名寄駅前間で利用した。当日の車は白地に濃淡グリーンのラインで飾られた、道北バスの路線車カラーの1台。
2000〜03年頃まで製造されていた、日産ディーゼル製「スペースランナー」系の下回りに、富士重工の車体を載せたモデルだ。
型式はKL-UA452PANで、ホイールベース5.8mのタイプ。2001年に道北バスが新車導入した経歴を持ち、2023年時点で車齢20年を超える生え抜きの準・旧車だった。
ほぼ同じ仕様の車は数台しか作られなかったとのことで、かなりレアな存在らしい。
■2回目の乗車:若手ハイブリッドが登場!
2回目は2024年5月。今度は逆方向、名寄駅前→旭川駅前間での乗車。この時には初回とは打って変わってまだまだ真新しさを放つハイブリッド車が登場した。
2017〜24年まで製造された、2SG-HL2ASBPの型式を持つ、日野ブルーリボンのハイブリッド仕様。ホイールベース6m、車体の長さが11.26mのフルレングスタイプだ。
こちらは道北バスが2018年に新車導入した1台とのこと。最近の路線バスらしいカッチリした乗り味から、逆方向ならではの新鮮な雰囲気を越えて、全く別物の路線に乗車しているようなフィーリングを持った。
■3回目の乗車:ワンロマまで来るのか?
3回目は2025年9月。次はまた旭川駅前→名寄駅前間での全区間利用だ。初回と2回目とで車種が異なっていたのもあり、3度目に来る車は何だろうと期待。
名寄行きの表示を掲げて現れたのは、白地にピンク、青、青緑のラインで飾られた、同社の高速バス系の色に塗られた大型路線車。
車種は角目4灯ヘッドライトが特徴的な、三菱ふそう製エアロスターのマイナーチェンジ前のモデルだ。
大体同じ顔をしたバス車両は今も首都圏で使われているので、12〜3年くらい前のエアロスターかと思った。
ところが乗ろうと出入口に目をやれば、ドアの奥に段が2つ構えている、いわゆるツーステップ車。内装の全体的な作りもまた、どちらかといえば旧車寄りの様相。
しかもこのエアロスター、リクライニング式のハイバックシートが並ぶ「ワンロマ車」と呼ばれる内装レイアウトになっていて、名寄線にはワンロマまで来るのかと、ちょっとビックリ。
気になる同車のプロファイルを探ってみると、1996〜2000年まで製造されていた、エアロスターのKC-MP717Mと呼ばれる型式。エアサスを装備したホイールベース5.5mのモデルだ。
1998年式と、顔こそ全国でごく普通に使われている路線バスと大体同じながらも、車齢は何気に初回乗車時の車よりも旧いわけで、見かけによらないとはこのことかも……。
こちらは元々、神奈川県の大手バス事業者・神奈中バスに所属しており、2010年代の始め頃に道北バスに“再就職”した車であった。
走行距離80kmを超える長距離路線で、これといった車両の指定がない物珍しさに加えて、こういった準・旧車と現行車が混じって活躍している様子は、首都圏では各事業者による車両入れ替えの周期的に既にお目にかかれなくなった希少性があり、贅沢で刺激的な車両ラインナップに思えた。
この次はどんな車が姿を見せてくれるのか、名寄線に乗るのがまた楽しみだ。
【画像ギャラリー】道北バス名寄線の車両バラエティ(10枚)画像ギャラリー



















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