最近は路線バスも車種が限られてきたとはいえ、現役の古い車まで範囲を広げると、今もたま〜に「あれこの車ナンだ?」と思わせる、変わり種の1台に出会えることがある。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、変わり種小型バスの写真があります)
■駅前に現れた気になる1台
今回は2025年9月に見かけた、今やちょっと風変わりな路線バス車両を紹介したい。この車は、北海道の砂川駅前〜えみる(浦臼駅)間を結ぶ、浦臼町営バス(運行は美自校観光バス)で使われていたもの。
フルサイズの路線バス車両をギューっと縮めてデフォルメしたような、形は箱型の中型・大型路線車とよく似ている一方、車体が極端に短く見える旧タイプの小型バスだ。
最近の小型バスといえば、独特のデザインが強力なアイデンティティを放つ「日野ポンチョ」が多数派で、旧タイプは日に日に珍しくなってきた印象がある。
■旧世代の小型バス……だけど何かが違う
浦臼町営バスの車は、左右に2つずつヘッドランプを横に配置した角目4灯ライトで、ノンステップ仕様、前と中央に2枚折り戸が付いた、超短尺ながらも設備は一般的な路線バスとほぼ同じ本格的なもの。
はじめパッと見た時点では、顔つきから三菱系、恐らく「エアロミディ」の全長7mのモデルかな? と思った。
ところが、寸詰まり感が愛らしいサイドビューはもとより、前から車体を観察すると、どことなく幅が狭く、エアロミディってこんなにスリムだったっけ? と思わせる。
車内もやはり普通の小型バスに比べて、通路を挟んだ向こう側のシートまでの距離がちょっと近い気がする。
■エアロミディなのは確かだけれど
やっぱりこの車、普通の小型バスよりも更に小さいのでは? そんな違和感が拭いきれないこの小型バスの正体やいかに?
軽く掘り下げてみると、メーカーと車種は三菱ふそう製「エアロミディ」であるのは確か。しかし、エアロミディでも従来のタイプとは異なっていた。
同車は「エアロミディME」と呼ばれるバリエーションで、初期の型式がKK-ME17DF。2002年4月23日に発売された、コミュニティバスや短距離路線向け・全長7mクラスの小型路線車だ。
三菱ふそう製の、同年代の小型トラックやマイクロバスにも同型が採用されている、4899cc・180馬力のディーゼルターボエンジン(4M50)をリアに搭載。当時の価格は1340万円ほど。
■20年モノの後期型が現役!
浦臼町営バスの車両を見ると、こちらは平成15年の排ガス規制に対応した、型式がPA-ME17DFの後期型にあたる。
2004〜07年まで製造されており、実車のコーションプレートに平成17年の打刻があったところから、2005年式とみられる。
スリムだと思った車幅もずばり見たままだったようで、通常タイプが約2300㎜であるのに対して、MEは2060㎜まで詰めてある。これは日野ポンチョの2080㎜よりも狭い。
一方で高さは通常のバスとあまり変わらずシッカリ2900㎜ある。スリム感がより増強されて見えるのは、幅と高さの比率がアンバランスなところから来ているとみた。
■運用的にもレアキャラでした
浦臼町営バスの車は、元々小田急バスで使われていたものが引退後、2024年頃に町営バスの運行を受け持っている美自校観光バスに再就職した経歴の持ち主。
車体に残る赤色+白色の塗り分けが小田急バス時代を彷彿とさせるが、小田急バスでは白く塗られている裾とラインの部分を若干色合いの異なる赤で塗り重ねてあり、全体的なカラーリングはオリジナルにアレンジされている。
また、運転手さんにお話を伺ったところ、同車は予備車の扱いになっており、普段、浦臼町営バスの砂川〜浦臼間には日野ポンチョが入っているそうだが、ちょうど整備に出しているタイミングで、たまたまエアロミディMEに出番が回ってきたとのこと。
ただでさえ旧タイプの小型バス自体をあまり見かけなくなった昨今、これは相当なレアケースに当たったようだ。こういった偶然に出会すのも、何事も型に囚われない例外の宝庫たるバスの面白さである。
【画像ギャラリー】小型バスのさらに小型! エアロミディME(6枚)画像ギャラリー











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