フジエクスプレスで臨時運転士として採用された記者のバス運転士奮闘記はようやくすべての社内教習と見極め試験を終えて独車(一人で営業運転すること)ができるようになった。そんな誰の助けも得られない状況で営業運転が始まる。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■運転支援システムで省力化はされている
営業運転ではワンマンバスなのですべてを一人でやらなければならない。路線バスの場合を見ていくと、行路表は運行管理者から手交されるが、これはダイヤというよりも運転士の交代場所や時刻、再度引き継ぐ時刻等が記載されたいわば「運転士のダイヤ」だ。スタフは各車両の中に備え付けられていて、行路表に記載された番号のスタフをクリップでとめるだけでいい。
ダイヤはパターンダイヤなので、朝晩の途中停留所からの発着運用以外は、毎時何分に当該バス停を出発するということが決まっている。よって紙のスタフには分しか記載されておらず、1枚のスタフは多くの時間帯で使いまわせるようになっている。
そんな乱暴なと思うかもしてないが、実はラムコーダーというデジタルスタフのモニターがあり、その画面上には停留所名と発車時刻、GPSから取得した正確な現在時刻と次の停留所での発車時刻からプラスマイナス何分なのかが表示され、早発防止のためにマイナス時分の時には赤い表示になる。
ラムコーダーはデジタルタコグラフ、GPSによるバスロケーションシステム、案内放送、行先方向幕、車内案内モニターすべてに連動しているので、運転士は出庫の際に運行番号と乗務員コードを打ち込むだけで回送から実車の行先表示、デジタルスタフに至るまで全自動でセットされる。
こうした運転支援システムにより運転士の業務を省力化する努力は事業者においてされている。しかし、運転そのものは人に手に頼る必要があるので、訓練が必要だというわけだ。
■運転で変わったこと
教習中ははっきり言って乗客の対応をする必要がなかったので、運転そのものに集中することができた。もちろん後半ではバス停への停車や放送やドア扱い程度のことはやるが、それでも実際に乗客が乗ってくるわけでもないので、しっかりと運転することが求められた。
いくら免許を持っていても、都度変わる道路交通の状況に合わせてバスを操り、数十メートルしか離れていない次のバス停に停めるために路駐車を避けて止め、前に路駐車がいるとバスが出る際のマージンも考えて止め、狭隘路では左右を気にしながら走っていた。
ところが、実際に営業運転に従事すると、車両感覚が身についたのか左右の確認はすれども「通れるか通れないか」の判断は無意識にしていたのが自分でもおどろきだった。
前後の間隔も同様でバス停にとめて出る際に右いっぱいに切ると左後ろがオーバーハングで出てしまいギリギリだとガードレールに当たってしまう。前に駐車車両がないと角度を付けずに出られるが、そこは東京都内のことだ。たいていタクシーが客待ちで路駐している。
あまり近いと歩道に寄せられず少し離して止めるしかない。すると高齢者は一度車道に降りてから乗らなくてはならず、乗りにくそうなのは分かる。しかし付けすぎるとバスが出られないのだ。そういう感覚も無意識に計算してバスが出られる距離で止めている自分がいた。







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