路線バスには必ず存在する「終バス」。これはその日のその系統の最終運行を意味する単語である。
その終バスの前を走るのは「終前(しゅうまえ)」と呼ばれる終車1本前の運行があるが、大都市を中心にそれを行先表示に表す事業者がある。今回は終車・終前について説明しよう。
文/写真:高木純一(バスマガジンvol.88より)
終車灯を使用している事業者はとても少ない
終車であることを行先に表すために行っていることは、普段は蛍光灯の灯りで行先表示を照らしているが、終車の場合は蛍光灯を消して赤い豆電球を照らすことで終車をアピールしている。
実は全国的に見ても終車灯を使用している事業者はとても少なく、東京・神奈川・埼玉・千葉・京都・大阪などの大都市中心部でしか見ることがない。その中でも事業者によっては終車表示が無いところすら存在する。
現在はほとんどがLED表示に変わってしまったが、方向幕時代は終車灯の表示の方法は統一されていた。
LED表示機の場合はオージ製のものを採用する事業者は、ドット面の周りを赤く囲う形で表現されており、それ以外のメーカーの表示機では行き先と「最終バス」というコマが交互に表示されたり、行き先の後に「終バス」または「終」と小さく書かれるパターンが多い。
終前灯となるとさらに使う事業者は少なく、ほぼ都心部を走る事業者に限定される。こちらは終車の赤に対して緑色の豆球を点灯させることで表現している。ただ、この終前灯は方向幕時代では「終前」を表すものであったが、一部の事業者では「深夜灯」と呼ばれ、深夜バス運行時に点灯させる用途もあった。
現在でもオージ製LED表示機を使用する事業者では深夜バスのみ緑囲いで表示する事業者が多い。
行き先表示が赤くなっていたら“何かある”と思って確認を!?
終車・終前灯の設定は系統単位と区間単位で分けられ、系統単位だとその系統の最終運行時に終車灯を点灯させるが、重複路線の場合はその後も同じ行き先でも系統が違うため終車ではない車両が運転される。
区間単位ではその区間を走るバスの最終という意味になり、重複路線も含めての最終運行となる。
この場合、区間ごとに終車設定がなされ、駅向けなどは途中から重複路線となり、このバスよりも後にまだ営業バスがある場合は合流区間から「終車灯消灯」と運行表に書かれていたりもする。
いずれにせよ、このことを知らなければ「何で行き先が赤いんだろう?」と思う利用者も少なくないと思う。また終車灯の無い地区の方が見れば「故障か?」と思ってしまうだろう。