2000年を越えてからは方向幕車は急速に減っていった。その中には「LED化」を推進した事業者があったことも理由のひとつだ。ここで地区ごとに方向幕車が無くなった事業者を追ってみる。
文/写真:高木純一(バスマガジンvol.79より)
青森市が早くにLED化を推進させ幕式を全滅させた(!?)理由
東北地区で一番早く方向幕車が無くなったのは青森市交通部だ。北海道や東北地区は極寒の冬なので方向幕が凍りやすく、巻く際に破損してしまう事象があったようだ。そんな中、99年式の新車から青森市営は松下製のLED表示機を採用し、在来車にも乗せ換えを行った。
その結果、LED化が完了したのは2000年をこえてすぐ。全国でも早いうちに方向幕車が全滅した事業者であった。
関東地区では在来車のLED化を行ったのは神奈川中央交通、西武バス、東急バス、京浜急行バス、京成バスなど大多数の事業者が一瞬にしてLEDに変わっていった。
特に東急バスはLED化を行う少し前に神奈川県の路線に系統番号を付番し、該当営業所の方向幕を一新したが、数年でLED化されてしまった。反対に京成バスは系統番号を付番するためにLED化を進めていった。
神奈川中央交通は路線数が多いため方向幕のコマ数も日本一であった。しかしその分所属台数も多く、ワンマン機器の更新を同時に行ったためLED化を始めたのが遅くなってしまった。
中部地区ではバス機器で有名な「レシップ」のお膝元である岐阜バスがLED化を行った。また三重交通は営業所の統合があったため該当営業所の車両は経年車を含めてLED化をした。だが今でも営業所単位で方向幕車は存在している。
幕の生産終了を受けて有名なモノコックのLED車が登場した
関西・中国地区は交通電業社製方向幕を採用している事業者が多く、この交通電業社製方向幕を採用していた尼崎市交通局、阪神バス、山陽電気鉄道、明石市交通局、松江市交通局などは一夜にしてLED化を達成させた。
なぜ交通電業社製の方向幕を採用した事業者が一気にLED化したのかというと、理由は「メーカーが方向幕の生産を終了した」からである。メーカー側も年々方向幕の受注が減り、製造ラインの維持が厳しくなってきたため、苦渋の決断をしたのである。
現実に倒産した方向幕メーカーも存在する。また、事業を廃止し路線を民間に委譲した三原市交通局や尾道市交通局は委譲の際にLED化を完了させた。
四国地方では当時の土佐電気鉄道が自治体の補助金を受けてLED化を行った。この改造は当時でも古かった通称ブルドック車などにも施され、「モノコックボディのLED車」として有名であった。
同じ地区を走る高知県交通も同時期にLED化が行われ、高知市内からは一瞬にして方向幕車を見かけなくなってしまった。
九州地方では西鉄グループが台数が多いにもかかわらずLED化を完了させた。ただし、一般路線車のみの完了であって高速バスは今でも新車で方向幕を採用しているのは実に不思議である。
また西鉄のLEDは右側に色を表示する小さな幕を搭載している。これはLEDでは系統番号で使用していた色を表現できないため、ここだけは幕式で残っている。現在に新車はこの仕様は無くなってしまった。