路線バスや観光バスに搭載されている車載用品にフォーカスし、その奥深い世界を知ろうというこの企画。今回は運賃箱製造を行なう小田原機器を訪れ、歴史的変遷や最新機器を見せてもらった。
各事業者でそれぞれ強いこだわりの部分があり、実質オーダーメイドになるほどの運賃箱。最新機種では単に運賃を回収するだけの機械ではなくなっており、その進化が続いているのだ。
取材/文:小林敦志(バスマガジンvol.87より)
単なる運賃払い機の枠を超え、とどまることなく進化する
日常生活で路線バスを利用すれば必ず目にするのが運賃箱。現金だけでなく、ICカードの利用やチャージ、さらに機種によれば回数券あるいは1日乗車券の発券などまで可能となる多機能ぶりは、日本ならではのものといっても過言ではない。
今回はそんな運賃箱について、国内シェアで約半数を占める小田原機器を訪れ、話を聞いた。
まず驚かされたのが、各バス事業者で細かい“こだわり”があり、それぞれの運賃箱に反映されているということ。そのためオーダーメイド感覚で運賃箱の製造が進められるとのことである。
たとえば、整理券発券機にはなるが、主流の感熱式ではなくいまだにスタンプ式にこだわる事業者もあるとのことである。今回紹介する最新機種では多言語表示にこだわったものになっていたりしている。
もうひとつ驚かされるのが、運賃箱という枠を超えて進化しているということ。“音声合成システム”と情報共有することで利便性を大幅改善するだけでなく、金庫に利用者数や運賃売り上げなどのデータの記録が可能となっており、納金と同時に記録データを回収することで、運行ダイヤの作成などに生かされている。
今後は顔認証システムを導入した運賃収受システムなどの登場も十分ありうるとのことなので、運賃箱の進化は今後ますます目が離せないといえるだろう。