「その1」で述べた成田空港についてのようなことは関西空港にもいえ、岡山、香川、徳島からの空港バスがある。これらの県にはいずれも空港があるが、国内線と、国際線は近隣国へしか飛んでおらず、関西空港を利用する機会は多い。
文/写真:谷川一巳(バスマガジンvol.82より)
※掲載している料金などはバスマガジン本誌掲載時のもので現状と異なる場合があります
東京以外でも長距離空港バスは活躍している
空港バスと都市間バスをうまく組み合わせることで、空港バスがない地域からも空港アクセスを向上させている例もある。広島空港へは広島県内の府中、甲奴、因島地域からの空港バスはないほか、尾道からは1日3便しか空港バスがない。
そこで、これら地域と広島を結ぶ都市間高速バスと、福山からの空港バスを山陽自動車道の高坂パーキングエリア内のバス停で接続させるといった運行を行っている。このバス停は乗り継ぎ専用で、ここで下車しても高速道の外には出られないというユニークなバス停である。
荒天時も定刻運行だった!?長距離の空港バス
バスゆえに時間が読めず「飛行機に乗り遅れたら大変」とも思うが、かといって鉄道に比べて信頼性が低いわけではない。こんな経験をしたことがある。北海道の釧路に滞在し、新千歳空港から成田行きの便で帰京する際、荒天でJR北海道の石勝線が不通になってしまった。
そこで帯広までJRを利用し、帯広〜新千歳空港間は帯運観光の「とかちミルキーライナー」を利用した。これも長距離空港バスのひとつである。
荒天なのは線路も道路も同じなので、定刻通りの運行は期待していなかったのだが、バスは占冠パーキングエリアで予定通りの休憩を行い、1分の遅れもなく定刻通りに新千歳空港に到着した。
台風が東京に接近したときなどもそうだが、一般に鉄道は荒天時にはすぐ停まる傾向にあり、バスは高速道が通行止めにならない限り通常運行しているのがほとんどである。空港バスは天候に強いともいえるのだ。
長距離空港バスが育たなかった空港もある!?
しかし、長距離の空港バスは、どの空港でももてはやされている訳ではない。たとえば、中部空港開港時は、静岡、岐阜(中津川)、長野(長野、松本、諏訪)、福井の各地域から空港バスが開設されたが、現在はこれらの路線はすべてなくなった。
このうち静岡と松本には空港があるものの、それら空港からの路線はごく限られているので、需要がないわけではないと思うのだが、バス路線を維持するだけの利用者はいなかったのである。
静岡県に関しては、浜松から中部空港への便は現在も運行しているので、浜松なら中部空港へ、静岡からなら成田空港を利用するという傾向があるのかもしれない。
いずれにしても、広範囲の地域から集客している空港と、利用者の居住エリアがほぼ決まっている空港があるように思える。