今なおモノコック車を走らせる小粒ながらも特徴ある事業者 士別軌道の平成時代

今なおモノコック車を走らせる小粒ながらも特徴ある事業者 士別軌道の平成時代

 平成初期に活躍していたバスを振り返る、バスマガジンの人気コーナー。今回は士別軌道を取り上げる。

 士別軌道はその社名の通りかつては木材運搬のための軽便鉄道を運営していたが1959(昭和34)年に廃止され、現在はバス専業として事業を継続している。人口約1万8000人の小さな市を拠点とする小規模な事業者であるが、現在も希少なモノコックバスを定期運行する事業者として知られ、ファンからの注目も熱い。

執筆/写真:石鎚 翼
※2021年7月発売「バスマガジンvol.108」より

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平成初期は一般路線車両の多くをモノコック車が占めていた

■日野 RC300P

日野製トップドア車で路線バスタイプの前面マスクを持つ。当時の郊外線用車両の一般的なスタイルで、メトロ窓を採用し、車内にはハイバックシートが並ぶ
日野製トップドア車で路線バスタイプの前面マスクを持つ。当時の郊外線用車両の一般的なスタイルで、メトロ窓を採用し、車内にはハイバックシートが並ぶ

 士別軌道のバス事業は一般路線バスと貸切バス事業に限られ、高速バスの運行には参加していない。士別市を経由する旭川~名寄線急行バスは道北バスが、札幌~名寄線高速バスは北海道中央バスと道北バスがそれぞれ運行している。

 一般路線バスは均一運賃の士別市内線と、対距離運賃制の郊外線があり、市内線は基本的に前中ドアの車両で運行され、運賃も先払いである。郊外線はトップドア車が中心に運行され、前乗り前降りのスタイルが基本である。

 平成初期、一般路線車両の多くをモノコック車が占め、特に郊外線は日野製の古参車が多く用いられてきた。市内線には中古の前中ドア車が投入され、首都圏から転入した一般路線車も使用された。

■日野RC320P

士別市内線に導入された長尺・エアサスの前後ドア車で、北海道中央バスからの転入。北海道中央バス時代はいわゆるセミロマンス仕様車で、かつ観光バスタイプのグリルを装備する
士別市内線に導入された長尺・エアサスの前後ドア車で、北海道中央バスからの転入。北海道中央バス時代はいわゆるセミロマンス仕様車で、かつ観光バスタイプのグリルを装備する

 現在、北海道最後のモノコック車として注目を集めているK-RC301Pは、1998(平成10)年に、和寒町の自家用車だった車両が転入したもので、以来20年以上にわたり活躍を続けている。

平成初期は郊外線にも大型車が多く活躍していた

 転入当初は写真のように当時標準的に採用されていた緑、赤、青のストライプが配されたものだったが、のちに現在の旧カラーが施された。現在は多くの路線がデマンドバスとなり、車両も中小型バスが中心となったが、平成中ごろまでは多くの路線が大型車で運行されていたのも懐かしいところである。

 なお、一部のトップドア車は貸切車からの転用と思われ、貸切車用の塗装が施されているものもあった。また、一部は中古車で賄われていたが、前述のK-RC301Pと同様、道内の自家用車からの転用も見られた。

■日野 P-RU638BB

日野ブルーリボン・スーパーミドルデッカの貸切車で山梨県の朝日観光自動車から転入した車両。日野製の貸切車はこの当時少数派であった
日野ブルーリボン・スーパーミドルデッカの貸切車で山梨県の朝日観光自動車から転入した車両。日野製の貸切車はこの当時少数派であった

 貸切バスはハイデッカ車が中心の陣容で、三菱エアロバスが主力だったが、スーパーハイデッカ車も在籍した。現在は多くの貸切バスが新たなカラーリングデザインとなっており、この頃主力だった3色カラーは失われつつある。

 令和の世に至るまで、モノコック車が活躍するとはこの当時は想像すらできなかったが、今後とも士別軌道のマスコットとして活躍を続けてくれることを願う。一方でモノコックバスの関連グッズ販売も手掛けており、乗車訪問のみならず、グッズ購入でも事業者支援に貢献したいところである。

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