懐かしの国鉄「なんごく号」から代替わりして20年以上……末裔の「なんごくエクスプレス」に乗ってみた

懐かしの国鉄「なんごく号」から代替わりして20年以上……末裔の「なんごくエクスプレス」に乗ってみた

 その昔隆盛を極めた国鉄バスの末裔と言えるバス路線が、今もJRによって各地で運行されている。ジェイアール四国バスの「なんごくエクスプレス」もその一つだ。

文・写真:中山修一

■松山と高知をショートカットした「なんごく号」

国鉄バス「なんごく号」の乗車時に必要だったバス指定券
国鉄バス「なんごく号」の乗車時に必要だったバス指定券

 2023年現在に運行されている「なんごくエクスプレス」は、愛媛県の松山市内と高知県の高知市内を結ぶ、四国の都市間高速バス路線の一つだ。

 「なんごくエクスプレス」には前身と呼べる国鉄バスが存在した。同じ松山〜高知のアクセス便だった国鉄バスの松山高知急行線「なんごく号」である。

 「なんごく号」は国鉄/JR松山駅〜久万(後の久万高原)〜落出〜佐川駅〜高知駅間を、地図で見て緩い「し」の字を描くような経路で繋いでいた。

 海沿いをなぞるように進む鉄道に対して、愛媛県と高知県の内陸部を突っ切る短縮ルートと言えるものだ。

 たとえば1981年当時、鉄道では松山から高知まで多度津回りで最速5時間、宇和島回りで6時間以上かかったところを、「なんごく号」なら3時間40〜53分くらいで行くことができた。

 国鉄の時代には上下ともに1日13本もの便が設定されており、四国では常に黒字をマークし続けた超重要路線だったと伝えられる。

 その後、途中の停車駅(停留所)を減らし所要時間を3時間4分に縮めた「特急」が新設。JR化後の1995年当時には急行便合わせて1日15本の「なんごく号」が往来していた。

 通しの運賃は1981年当時で2,200円、1995年が3,200円。運賃に加え400円のバス指定券を購入すると利用できた。

 下道を走るため普通の路線バスに近い雰囲気を持っていたほか、内陸の山深いエリアを通るということで、車窓からの景色の移り変わりが実に豊かなのも特徴であった。

■高速道路の発展で生まれた「なんごくエクスプレス」

 2000年代に入り四国内の高速道路網が広がると、松山〜高知間を松山自動車道・高知自動車道を経由して結ぶ高速バスが、他のバス事業者によって運行されるようになった。

 これに対抗するため、当時のJRバスも経路を高速道路に改めた松山〜高知の都市間高速バス「なんごくエクスプレス」を走らせることになった。

ジェイアール四国バスの大型高速車
ジェイアール四国バスの大型高速車

 「なんごくエクスプレス」は2001年12月にデビュー。従来の「なんごく号」を大幅減便させた上で同時運行を続ける移行期間を経て、2002年9月に「なんごく号」は廃止された。

 なんごくエクスプレスが誕生して22年以上が経ち、既に高速バスとして歴史を持った路線になっている。

 2023年3月現在、松山からの「なんごくエクスプレス」は、JR四国バス松山支店を出発し、JR松山駅など市内を巡回したのち高速道路に入り、地図で見て「フ」の字を描くような経路で高知駅へ向かったのち、終点のはりまや橋に到着する。

 ほぼ同じ経路を辿る競合関係の高速バスとしては、伊予鉄バス/とさでん交通が運行する「ホエールエクスプレス」がある。こちらは出発点/到着点がJRと異なる。

 「ホエールエクスプレス」では、はりまや橋行きの出発点が松山空港またはJR松山駅、高知からの便は高知駅バスターミナルが出発点で、到着場所がJR松山駅経由で大街道もしくはJR松山駅経由・松山空港となっている。

 「なんごくエクスプレス」と「ホエールエクスプレス」どちらもほぼ同じ運賃で、主要区間と言えるJR松山駅〜高知駅バスターミナル間の所要時間も、ともに3時間を切るくらいの設定だ。

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