2023年10月は北海道の路線バス、特に鉄道代替バスが大きな変革を迎える節目になった。元夕張鉄道、元JR標津線の代替バスと足並みを揃えるかのように、乗りバス旅では超有名な、あの路線がついに動きを見せた。
文・写真:中山修一
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■北の果てを目指した天北線
北の果て、日本最北端の地である宗谷岬を有する稚内には、2023年現在でJRの鉄道路線・宗谷本線が乗り入れている。
稚内にはその昔、やや日本海寄りの内陸部を通る宗谷本線のほかにもう一つ、オホーツク海側に向けてレールを延ばす天北線という路線が繋がっていた。
天北線は、黒い色の蕎麦で有名な内陸の村・音威子府から分岐し、南稚内駅で宗谷本線と合流する、全長約150kmの路線だった。
通しで運転される列車の数は1日6往復程度であったが、札幌直通の急行列車が1往復あり、鈍行しか走らないのがお定まりであるローカル線としては珍しかった。
北海道に敷かれていた多くの赤字国鉄ローカル線の中で、国鉄天北線からJR天北線へと転身を遂げた数少ない存在だったが、赤字線が覆ることはなく、JRになって2年ほど経った1989年に全線が廃止された。
■鉄道の代わりになった「ものすごく長いバス」
鉄道廃止後は、他の例に漏れず代替バスが走ることになった。稚内エリアをカバーするバス事業者の宗谷バスが「天北線」の路線名を引き継いで、1989年5月に運行を始めた。
鉄道代替バスということで、JR天北線をトレースするような経路で稚内駅〜音威子府駅の間を結んでいたが、開業から20年以上経った2011年に劇的な変化が起きた。
稚内からオホーツク海側に出るまで、従来は内陸部を横切っていたところを、2011年からは海沿いを通り宗谷岬を経由するようになったのだ。この関係で路線名が「天北宗谷岬線」に変更されている。
運行ダイヤは、通しで稚内〜音威子府間をアクセスできる便が上り・下りともに3本ずつ。バス旅目的で程よい時間帯に無理なく乗れる便も1本ずつあった。
およそ163kmにものぼる距離を走る、ごく普通の路線バスであり、通しで利用すると4時間20〜40分程度かかる長大路線ということで、ローカル路線バスの中でも有名な存在だった。
とはいえ端から端までシートに座りっぱなしを強いられる心配はなく、稚内から62km先の鬼志別、101km先の浜頓別、121km先の中頓別でトイレ休憩があり、そこまで乗り通しが難しい路線というほどでもなかった。
最後まで乗ると運賃もそれなりに上がり、運賃箱に千円札を4枚入れるという、他の路線バスではなかなかお目にかかれないダイナミックな体験ができたのも天北宗谷岬線ならではだ。
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