■線路が直るまで……のハズが!?
代行バスは線路が元に戻れば晴れて卒業となる。ところが根室本線の場合、線路が壊れた区間の利用が元々極端に少なかった。
ちょうど将来的な方向性を模索し始めた頃合いに災害に遭ってしまった関係で、根室線が石勝線と合流する地点より手前の区間は、損壊した直後から復旧に対しては慎重だったと見られる。
一時的な救済措置として走り始めた代行バスも、運行開始から1年・2年と過ぎてゆき、気付けば7年が経過。
既に代行バスは肩書きだけで、新得〜東鹿越間の足を支える主力の交通手段へと、軸足を移し切った感を出すほどに定着した。
そして2024年3月31日、線路の復旧断念に加え、不採算を理由にレールが生きていた富良野〜東鹿越間を含めた、富良野〜新得間81.7kmの部分廃止が決まった。
書類の上で代行バスは「鉄道」の扱いであるため、鉄道路線本体が廃止となれば、それに合わせる形で代行バスも役割を終えることになる。
■実はすごくオイシイ路線だったりする
代役のまま7年以上もステージに立ち続けた根室線代行バスも、2023〜24年で最後の冬を迎える。
2023年11月の時点で、東鹿越〜富良野間の鉄道パートは既に、ある種のセレモニーが現地で常時開催していると考えておくのが君子危うきに何とやら、だ。
鉄道の一方で代行バスのほうは陰に隠れて、何やら控えめな印象。ところがこの代行バス、利用してみると実は中々オイシイ要素を持った路線だったりする。
根室線代行バスは、路線バスや貸切バス、空港連絡バスなどを運行する「ふらのバス」が委託を受けている。
ハイデッカータイプの貸切バス車両が使われているため、居住性にかけては普通列車のそれを超えるものがある。
バスは新得〜東鹿越の途中で、サホロリゾート、落合駅、高倉健さん主演の映画の舞台になった幾寅駅を経由する。
通しの所要時間にすると1時間10分くらいであるが、何よりも狩勝峠を通るのが代行バス最大の見所だ。
バスのメインルートである国道38号線の一部に狩勝峠が含まれており、頂上に達した地点での標高は644mになる。
高度を稼いでいく行程の楽しさと、頂上付近で車窓から十勝平野の大パノラマが広がる瞬間は見逃せない。
また、代行バスを利用するにあたっては、車内で運賃を支払うのではなく、事前にJRの駅の券売機で普通乗車券を購入しておく。
あくまで鉄道ということで、いわゆる「電車の切符」を見せて乗る点も、バスとしては珍しい体験になる。
■普段の姿はどうだった?
根室線の終焉区間は既にWebメディアやTV番組等で大きく取り上げられ、「殺到」のような表現で人出の多さを強調しているケースが多々見られる。
連続した休みを作りやすい週や、青春18きっぷ他フリー乗車券が使える期間中は、確かに集中する日がありそうだ。
根室線の代行バスを利用した中で、例えば2017年12月の、フリー乗車券OKの時期に新得→東鹿越に乗車した際は10名ほどの利用があった。
また、2023年11月の終わり頃、ちょうど北海道は観光オフシーズンの最中で、フリー乗車券関係もまだ解禁していない期間では、新得→東鹿越の代行バス利用人数に限ると合計4名だった。東鹿越→富良野は折り返し組が追加され人数が若干増えた。
全区間が鉄のレールで繋がっていた2010年代の始め頃、富良野〜新得間に乗車していた利用者の数が“まばら”であったのを顧みると、2023年11月現在の代行バスの様子が、より普段の根室線に近い姿を忠実にトレースしていた、と言えるかも!?
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