どこへ連れて行かれるか分からない不安に駆られるせいか、地元だろうと旅先だろうと、よく知らない路線バスに乗るのはすごく度胸がいる。とはいえ、多種多様な公共交通機関網が張り巡らされた東京23区の中に限って言うなら、ローカル路線バスほど肩の力を入れずに実践できそうだ。
文・写真:中山修一
(井50系統の写真付き記事はバスマガジンWEBもしくはベストカーWEBをご覧ください)
■武蔵小山駅で初めて出会った路線バス
東京都品川区・東急目黒線が通っている武蔵小山駅。ふと、久々に駅前アーケードでも見に行こうと考えて、数年ぶりに訪問した。
各所をそれとなく回り、しばらくすると見慣れた東急バスの大型路線車が、駅前ロータリーのバス停に入ってきた。
バスの行き先に目をやれば「高輪ゲートウェイ駅」と表示されている。東急全開なムサコから、東急とはあまり関連性のなさそうな高輪ゲートウェイまで、東急のバスで直行できてしまう意外性に好奇心をくすぐられた。
しかも、バスの終点が山手線の駅前なら、人里離れた山の中を1日1本だけ走るローカル路線バスに挑戦して失敗→無事遭難するような危険性は皆無ということで、後のことは考えもせずバスの車内へ吸い込まれていった。
■高輪ゲートウェイ行き 東急バス 井50系統
武蔵小山駅〜高輪ゲートウェイ駅を結ぶのは、東急バス「井50系統」だ。この路線、実は2023年3月にできたばかりの、まったく新しい系統であると後で気付いた。
行き先もさることながら、平日10〜16時台の間に計8本、通勤通学ラッシュにかからない時間帯だけ走る、ユニークなダイヤ設定もまた興味を引く。都会の不思議なレア路線といった風格が、新しいながらも既にある。
バスは出発時刻の12〜3分ほど前に、武蔵小山駅バス停1番乗り場に横付けして、ドアを開けて待機していた。前乗り・後降りの前払い制で、運賃は230円だ。
■東急他線へのアクセスに対応
8人ほどの利用者を乗せてバスは出発。駅前ロータリーを出ると左折して、武蔵小山周辺の表通りと言える都道420号に入り、しばらく道なりに進んでいく。
途中、420号は東急池上線と大井町線をクロスする。池上線はそれほどサポートしていないようだが、大井町線のほうは下神明駅と大井町駅の近くにバス停があり、バスから電車へのスムーズな乗り換えに対応している。
始発から2.5km地点くらいにある、「豊トンネル」と「ふたばトンネル」の名称が付いたアンダーパスを使って、東急線とJR在来線・新幹線の線路を跨ぐ瞬間が印象深い。
出発15分ほどで、東急大井町駅バス停に着く。都道420号沿いに置かれた停留所に停まり、JR大井町駅前のバス乗り場には立ち寄らず、まっすぐスルーしていく。
ちなみに、井50系統が運休する土日祝には「井51系統」が運転される。井51系統は武蔵小山駅〜東急大井町駅止まりとなっている。
■目指すは第一京浜
大井町を通過した後も都道420号を直進する。高輪ゲートウェイに行くということは、品川方面へのメインストリートである国道15号(第一京浜)に出るハズ。
420号を直進していけば、国道15号とクロスする南品川三丁目交差点にぶつかる。ただし、バスは少し手前で左折し都道421号を抜けて、南品川三丁目経由に対して230mほどショートカットしつつ、国道15号へと抜ける。
15号線に入ると、あとは道なり。京急線の高架の隣をビッタリ張り付くようにして進んでいく。タイミングによっては途中で電車に追い抜かれるが、電車は品川駅手前で徐行するためバスが追い着き、結果ちょっといい勝負になる瞬間が見られて楽しい。
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