■会場内の移動も大変だった
次は会場内の移動についてだ。大阪・関西万博では広い会場を効率よく移動するために外周を周回するバス「e-Mover」が運行された。「e-Mover」は西ゲート北ターミナルからリング西ターミナルを結ぶバスで、途中6箇所の停留所がある。1乗車400円で、1日乗り放題の乗車券が1000円だった。決済はキャッシュレスだが、1日乗車券はスマホ表示ではなく腕に紙製のバンドを巻くというアナログだ。
外周ルート約4.8kmを約3~5分間隔で運行されていた。車両はEVモーターズ・ジャパン製の小型路線バスが用いられていたが、このタイプに加え自動運転バスも運行されていた。運転頻度は20分間隔で、停車する停留所も両端のみ停車というノンストップ運転が行われていた。
当初乗車した際は停留所の場所が分かりにくく、並んで乗車することも少なかったため移動に重宝していたが、やがて夏になり灼熱の下を歩いて回るのが大変になってくると、徐々に利用度も上がっていったようだ。
ただ決済の手段が各停留所にある端末で行うものの、タッチ決済が基本になっていたようで、差込みが必要なクレジットカードの場合は、係員が所持している端末で行う必要があったため手間がかかり、その結果待機列の長さを長くする原因にもなっていたようだ。
さらに西ゲートを来場予約しているがシャトルバス等が満席で利用したくても利用できない人のため、6月16日から大阪メトロ中央線夢洲駅を出た東ゲート前から会場外周道路脇の歩道を歩き、西ゲートから入場する歩行ルート(約1.6km、所要約30分)の開設に合わせて7月1日から万博会場内・外周を走行するEVバスによる「東西シャトルバス」が運行された。
ただし「eMover」のルートとバスを転用したので、運行される8時30分~11時30分は「eMover」の運転を行うことができず、運転再開を待つ人が更に待機列を作る事態になってしまった。結果として待ち時間が長くなり、1時間を超えることも多くなった。
前回の愛知県で開催された「愛・地球博」では、グローバルループと呼ばれる会場を1周する空中回廊を走行するグローバルトラムというEVバスがあったが、会期後半はグローバルループを歩く人の増加・混雑のため運転が難しくなりほぼ運休状態になったことがあった。
それはまるで大都市から路面電車が消えていった流れのようにも思えたが、今回は専用道路でそういうことはなく、有効な交通手段だと考えていたが結局は利用しにくいか利用できない代物だった。東ゲートから西ゲートはゆっくり歩いても40分の距離があるのでバスは救世主だったのだが残念である。
■バスの利点が生かされたか?
次は輸送実績についてだ。万博閉幕後に協会から来場者数と入場チケット販売数について最終的な発表がされたが、その中で会場までの交通手段別の割合も公表された。それによると鉄道による来場者は途中駅(弁天町・コスモスクエア)からの来場者も含めて全体の75.53%、それに対してJR桜島駅からのシャトルバスは7.65%、それ以外の大阪市内などのシャトルバスは2.36%であった。
夜行を含む中長距離バスは0.94%、空港バス0.23%、パーク&ライドのバスが8.20%となった。こうしてみるとやはり鉄道とバスでは輸送力の差が如実に表れたが、この割合では東西両ゲートに並ぶ列に差ができるのは想像に難くない。それでも連日混雑する会場で、往復の着席ができるシャトルバスは歩き疲れた身体を休めるにはよかったのではないだろうか。
また筆者もいくつか大阪市内からのシャトルバスを利用したが、早着する便が多くダイヤに余裕を見込んだ結果だろが利用者にとっては良かったのではないだろうか。平均値から推測すると約2割、実に580万人以上の来場者がシャトルバスを利用した計算だ。多くの来場者の記憶の中にさまざまなシャトルバスが刻み込まれたに違いない。
そして会期中の数値の他に各週ごとの数値やグラフも公開されているが、その伸びを見ると地下鉄と最初はなかなか利用されていなかったパーク&ライドのバスが徐々に伸びているのが分かる。それと比べるとシャトルバスは一部路線で増発はあったものの、当初発表されたダイヤから増発することが難しかったのでグラフも伸び縮みすることもなく一定した輸送にとどまっていたのがわかる。
またJR桜島駅シャトルバスについては、かなりの台数で輸送体制を敷いたが、当初は予約優先ながらも当日バスターミナルに来ても乗車することができあ。しかし途中から朝の万博会場行きと夜のJR桜島駅行きについては予約者のみとなったこともあり、思ったほどは輸送できなかったようだ。








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