バスも活躍した万博移動手段について課題も含めてもう一回いろいろ考えてまとめてみましたよ

2025年12月5日 / 乗りバス情報コメントする

■バスの終夜運転で乗り切った危機管理体制

　このように数字ではなかなか伸びのなかったシャトルバスだが、いくつか注目すべきトピックもあった。まずは8月13日の「事件」である。発表された資料によると、同日21時28分頃、大阪メトロ中央線コスモスクエア駅から大阪港駅間において停電が発生し、全ての列車が停止する事態に陥った。

　地下鉄を利用して帰宅する来場者の足が消滅してしまったのだ。会場から出ることも困難となり、結果的に多くの来場者が地下鉄が復旧するまで会場内に留まるしかなかった。22時過ぎには夢洲駅からコスモスクエア駅間で文字通りのシャトル運行を開始し、全線が復旧したのは翌日の5時25分だった。

　約11000人（関係者含む）が夜を明かした「オールナイト万博」と呼ばれた日であった。このような場合、西ゲートまで向かい、シャトルバスで帰宅できればよかったのだが全便予約制の上、お盆シーズンで満席という悪条件が重なった。

　そしてJR桜島駅シャトルバスも事前予約を済ませた人でないと乗車できず、万事休すだったのだ。このままでは会場内の来場者を帰宅させることができないため、23時40分からはJR桜島駅シャトルバスの臨時便が運行を開始し、その先はJRがバスの乗客を待って西九条行きの臨時列車を運行、さらにその先でも臨時電車が走るという関西の交通事業者がオール体制でこの局面に臨んだ。

　当日乗車した人の話では待機している来場者がいる限りバスは運行するということだった。また未明の1時20分には臨時バスの行き先を弁天町駅行きに切り替え、4時30分まで終夜運行された。ほかにも西ゲートには深夜に約30台の高速バスが集結し、SNSでは各社のバスが集まったことから「バスのアベンジャーズ」とも呼ばれ救世主になった。

　同時に最新技術や最先端のAIを見張る万博において、想定外の事態には人間の力や思いやりの精神でことに臨む「人の英知」を感じたのではないだろうか。

　思いやりといえば、シャトルバスで注目したいのは神姫バスではないだろうか。以前の記事でも紹介したので基本情報は割愛するが、他のシャトルバスがアプリ「KANSAI MaaS」による全便座席予約制・キャッシュレス決済であったのに対し、神姫バスはこの枠にはあえて入らず、事前予約は不要で交通系ICカードや現金での支払いも可能とした。

　また会期が進むにつれて始発のバスに乗車するため早朝から待機列が出来るようになると、続行便や臨時便を出して対応したり、毎月のようにダイヤ改正を行い増発を決めたりする等、臨機応変に便数を増やしていったことが好評だった。

　これは万博に「行きたい」のに交通機関の予約が取れず「行けない」という声に応えた形で、神姫バスが勝ち組と称されたのも当然の成り行きだったのかもしれない。

■横浜花博はどうなる？

　今回は大阪・関西万博を支えたシャトルバスについて会期終了後のまとめをお届けした。「家に帰るまでが遠足」という言葉が昔からあるが、万博会場の中だけでなく行きも帰りも含めて万博の思い出だ。ほとんどの場合は混雑した、満員電車の中を我慢して乗車という思い出なのかもしれない。しかしシャトルバスで橋の上から夢洲を眺め、正面に見えてくる大屋根リングや周辺の装飾や看板に気持ちが高まった人もいたはずだ。

　もちろん筆者も同様に感じた一人だ。大阪市内からのシャトルバス、各方面からの夜行バス、駐車場からのパーク＆ライドバスと実に多くのバスが運行され、安全に確実に来場者を会場へと運んだことは公共交通機関としての使命を果たしたといえるのではないだろうか。

　また時期を同じくして実証実験として会場内の外周バス「eMover」や新大阪駅等からの一部路線では自動運転バスも運行された。衝突事故もあったが、これだけの期間と運行回数は今後の貴重なデータを収集できたはずので、原因究明と対策を重ねて、未来の交通機関としての研究と進歩を続けてほしい。

　そして先の話だが、次回の万博はサウジアラビア・リアドで2030年に開催される。日本では横浜市で国際園芸博覧会（横浜花博）が2027年に開催される。詳細についてはこれからリリースされるのだろうが、会場アクセスとして最寄駅からのシャトルバス、また駐車場からのパーク＆ライドバス、空港からのシャトルバス、団体バスが計画されているほか、会場内を走行するEVモビリティも予定されているようだ。

協会等による貸切による運行では思うような増便できず運賃決定がバス事業者にはできないのが悩み？

　さらに乗車についてはICTを活用したMaaSの利用が予定されているようだ。恐らく今回の万博でも使われた「KANSAI MaaS」のようなアプリになるのではと予想されるが、今回明らかになった課題をフィードバックして、誰でも使いやすいシステムにしてもらいたい。そしてアクセスバスが安全に来場者を運ぶ形が変わりなく行われることを願って最終のまとめ記事としたい。