2021年3月11日、東日本大震災からちょうど10年の日を迎えた。
津波で大きな被害を受けたJR気仙沼線・大船渡線の沿岸部について、JR東日本は鉄道での復旧を断念。BRT(バス高速輸送システム)として営業を再開した。
以来、地域のニーズに応えたルート変更や新駅開業、ダイヤ改正を重ねて利用者にしっかり定着。2020年4月1日には鉄道事業を正式に廃止した。ここでは気仙沼線・大船渡線BRTの開業時と現在を比較して、その成長ぶりを振り返ってみたい。
取材・撮影/加藤佳一(BJエディターズ)
写真協力/東日本旅客鉄道盛岡支社
※2021年3月発売「バスマガジンVol.106」より
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■気仙沼線は専用道を次々に延伸 市街地の駅を増やした大船渡線
JR気仙沼線は柳津(やないづ)~気仙沼間55・3kmをBRTとして営業することとなり、2012年12月から運行を開始した。
線路跡を活用したBRT専用道は当初、歌津~陸前港間、陸前階上(はしかみ)~最知(さいち)間のみだったが、バスならではの低いホームの新設、待合室やトイレのリニューアルなどを各駅で実施した。
13年4月には本吉~小金沢間、大谷海岸~陸前階上間、最知~松岩間、不動の沢~気仙沼間、9月には陸前戸倉~志津川間、陸前港~陸前小泉間の線路跡を整備して次々に専用道を延伸。
20年3月の松岩~不動の沢間をもって、街全体が嵩上げされた志津川市街と小金沢~陸前階上間を除く区間で、専用道を走行するようになった。
並行して新駅の設置にも取り組み、専用道上に岩月、赤岩港、一般道区間に志津川中央団地、南三陸町役場・病院前、気仙沼市立病院の各駅が新たに開業している。
一方、大船渡線BRTは気仙沼~盛間43・7kmをBRTとして営業することとなり、13年3月から運行を開始した。当初のBRT専用道は大船渡~盛間と短かったが、気仙沼線と同じように駅設備のバリアフリー化を行っている。
内陸部の峠で県境を越える上鹿折(かみししおり)~陸前矢作(りくぜんやはぎ)間は、曲線や勾配が多く専用道に不向きであり、一般道も幅員が狭く大型バスの走行が困難だった。
そこで気仙沼~上鹿折間、陸前矢作~盛間の区間便、沿岸部の国道45号で県境を越える気仙沼~盛便の3系統を設定。気仙沼~上鹿折間はミヤコーバス鹿折線をBRT運賃にして代行させた。
また高田市街は街全体が嵩上げされたため、専用道は気仙沼~鹿折唐桑間、陸前矢作~竹駒間、小友~盛間にとどまっている。
半面、駅の新設は積極的に進めており、気仙沼市の一般道区間に八幡大橋(東陵高校)、唐桑大沢、陸前高田市の一般道区間に長部、陸前今泉、奇跡の一本松、栃ヶ沢公園、高田高校前、高田病院、西下、大船渡市の専用道上に碁石海岸口、大船渡丸森、大船渡魚市場前、地ノ森、田茂山と計14駅が開業した。
バスの機動性を生かしたきめ細かい輸送を実施している。