普段利用している路線バスや高速バス。そのほとんどは毎日運行されているが中には平日のみ、休日のみ、特定日のみというバスも運行されている。特定日のみというのはそれぞれに理由があるのだが、今回は三重交通のそれも神宮にかかわる特定日のみ運行のバスを紹介する。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■朔日参りの習慣
着いたのは三重県伊勢市だ。時刻は4時30分と、まだ辺りは夜という感じでやっと空の色が変わってきた頃だ。いくら早朝の神宮参拝が知られているとはいえ、さすがにこの時間では誰もいないと思いきや、参道には多くの人が行き交っている。8月1日で1日なので地元では当然のこととして受け止められている。
この日がどういうことなのかというと、古くから伊勢では毎月1日にいつもより早く起き、無事に過ぎた1ヶ月に感謝し、新しい月の無事を大御神様にお祈りする「朔日参り」の風習がある。年の最初である1月1日は初詣といってこれは神社などに行ってお参りしているかと思うが、それ以外にも毎月1日にこうした風習が今も続いている。
新しく始まる月の家内安全・無病息災・商売繁盛などをお祈りするということで、伊勢だけに限らず各地の神社などでも行われている。
■赤福の毎月一日の特別なお餅
そして朔日参りの参拝者向けに、参道沿いのお店などでは同じように早朝から営業し、様々なおもてなしが行われている。その中で有名なのは朔日餅だろう。伊勢おはらい町にある赤福本店で販売されるお餅で、通常販売されている赤福餅とは違いこの日だけ販売されるものだ。
1月を除く毎月1日に季節を感じさせるような和菓子が用意されており、毎月多くの人が求めに長い列を作る。通常赤福本店は5時開店だが、この日はもう少し早い4時45分に開店する。時間になると木扉が一斉に開き店主の挨拶が行われる。ずっと前から続いてきた毎月1日に見られる光景だ。
待っていた人たちが続々と店内に入っていくと朔日餅を買っていく。価格は通常の赤福餅とほぼ同じで小箱、大箱、化粧箱の3種類が用意されている。また購入に個数制限はないため、持ちきれない分を台車に乗せて運ぶ姿も見られる。これもこの日ならではの光景だろう。
■三重交通の神宮早朝バス
そんな日に運行されているのが早朝バスである。これは朔日参り・早朝の参拝者向けに設定されており、伊勢市駅前から内宮前の間を内宮方面に2便、伊勢市駅前方面に1便が毎月1日と土日祝日に運行されている。今回は外宮前からを5時30分に出る早朝便に乗車した。
バス停に向かうと外宮での参拝を終えたのだろうか、早い時間にも関わらず人が並んでいた。時刻表を見るとこの便が通常運行の定期便ではないことを示すために色を変えて表示されていたのが特徴的だ。乗り場に設置されているデジタルサイネージにも早朝バスという表示がある。
伊勢市駅前から乗車した人で10人程度の乗車だろうか。発車時間まで待機したあとバスは動き出した。このバスは55系統のバスでありながら早朝バスという表示があるように、停車するバス停は伊勢市駅前を出ると外宮前、猿田彦神社前、神宮会館前、内宮前と4箇所のみの停車だ。
その他のバス停は通過するので乗車の際は注意してほしい。またバス前面の表示に系統番号は出ていないのも、定期便とは異なる早朝バスならではというのを感じる。
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