■鉄軌道に代わって地域の生活を支える
●吉良吉田駅
愛知県内では全国に先駆けてモータリゼーションが進行。名古屋鉄道では1960年代、利用者の減少した鉄軌道の廃止を進めた。
また鉄道事業法が改正された2000年以降も、いくつかの路線が廃止されている。愛知県内の鉄軌道の代替輸送は名鉄バスが担当。いまもわずかに残る鉄軌道ありし日の面影を名鉄バスの沿線に探してみるのも興味深い。
■名鉄バス5つのポイント
戦時統合で名鉄自動車に集約された愛知県中西部のバス。終戦直後に名古屋鉄道の自動車部となるが、半世紀後の2004年に名鉄バスとして独立した。
会社概要や車両解説では伝えきれない同社の特徴を、1)名鉄バスセンター、2)基幹バス、3)ガイドウェイバス受託運行、4)燃料電池バス、5)グループ会社の5つの切り口で紹介する。
●Point01|名鉄BCは日本初の本格的バスターミナル
名鉄名古屋駅の上に1967年、18階建ての名鉄バスターミナルビルが完成。その3・4階に名鉄バスセンターがオープンした。日本初の本格的バスターミナルであり、名鉄バスや三重交通の近郊路線、名神ハイウェイバスなどが乗り入れた。
1980年代以降になると、北は仙台から南は鹿児島まで、多くの事業者の車両が発着するようになった。しかし2017年、名古屋鉄道が名鉄名古屋駅一帯の再開発計画を発表。バスターミナルも新たな施設に生まれ変わる予定である。
●Point02|全国唯一! 道路の中央を走る基幹バス
名古屋市ではバスの定時性確保のために基幹バスの運行を計画。1982年の東郊線に続き、1985年に新出来町線を開業した。新出来町線では日本で初めて中央走行方式を採用。名古屋市営バスだけでなく名鉄バスも運行に加わった。
名鉄BC~藤が丘・長久手・瀬戸方面の路線が栄~引山間でバスレーンを走行。同区間の表定速度が13.3km/hから17.9km/hにスピードアップされた。しかし中央走行方式はその後、他都市には登場しておらず、現在のところ全国唯一の存在である。
●Point03|ガイドウェイバスにも名鉄バス運転士
名古屋にもうひとつある全国唯一の存在。それが「ゆとりーとライン」と名づけられたガイドウェイバスである。「ゆとりーとライン」は2001年に開業。名古屋市交通局・名古屋鉄道・JR東海バスが運行を受託した。
2007年には「ゆとりーとライン」を担当する交通局大森営業所の管理を名鉄バスが受託。2009年に名鉄バス・JR東海バスが撤退したが、名鉄バスは交通局大森営業所の受託業務として、現在も「ゆとりーとライン」の運行を続けている。
●Point04|豊田市で活躍する燃料電池バスたち
トヨタ自動車のお膝元にある名鉄バス豊田営業所では、2010年からトヨタ燃料電池バスの営業実証運行に協力。その後の燃料電池バス普及のための貴重なデータを提供した。2014年には「とよたおいでんバス」で7401号の運行を開始。
この車両は2019年の春で運行を終了したが、夏には東京都交通局で使用されていた同型車が7901として、新製された量産タイプが7902として、揃って豊田営業所に配置された。いずれも引き続き「とよたおいでんバス」で使用されている。
●Point05|乗合は名鉄バス、貸切は名鉄観光バスに
2000年代初めまで名鉄グループには乗合バス事業者と貸切バス事業者が混在。2008年に愛知県内の再編が行われ、名鉄観光バスが発足した。同社は名古屋観光日急の京都線・神戸線、名鉄バスの熊本線・長崎線も引き継いだが、高速バスはすべて2009年に名鉄バスに移管。現在は貸切専業となって営業を続けている。
一方、名鉄バスは2008年に名鉄バス東部と名鉄バス中部を設立。約半数の路線の管理委託を行ったが、2018年にはいずれも名鉄バスに統合されている。