全国に25,000以上あると言われる路線バスの中で、都府県境を越える一般路線バスとなれば、極端なまでに数が減る。そんな県境越えバスの様子を見に行くシリーズの第20弾目くらいに訪れたのは、神奈川県／山梨県をチョイっと跨ぐ、神奈川中央交通「三56系統」だ。
文・写真：中山修一
（バスマガジンWeb／ベストカーWebギャラリー内に、神奈中バス 三56系統とその沿線の写真があります）
■東京またぎはお手のもの…だけど
神奈川県を本拠地に、都会の通勤路線から極み系ローカルまで、県内にキメ細かなバスネットワークを広げる神奈川中央交通こと神奈中バス。
神奈中バスといえば、神奈川県のほか東京都の一部エリアでの路線バス運行を受け持っており、管轄営業所の関係から同社全体で見れば少数派ながらも、神奈川〜東京都をシームレスにまたぐ路線系統がポツポツある。
そういった若干特殊な環境ゆえ、都県境越えとなれば“お手のもの”と言えるかもしれないが、実はこの神奈中バス、東京都に留まらず同じく神奈川県のお隣に位置する山梨県にも入り込んだりする。それが今回取り上げる「三56系統」だ。
■神奈川の奥の方にいる路線バス
これまでに試した全国各地の県境越え系路線の傾向を振り返ると、バスの始発／終点のいずれか、もしくは両方が電車の駅（のすぐ近く）といった、遠方から直で到達可能な、ポータル的な場所を発着するものが割と多いような気がする。
それに対して今回の神奈中バス「三56系統」は、電車の駅や沿線から遠く離れた場所同士を結ぶ、神奈川県の中でも特に奥の方へ行かないとお目にかかれない、ちょっとディープな存在。
JR横浜線／相模線・京王線の橋本駅を起点に津久井湖方向へ約12km。バスで行くと最速36分の「三ヶ木（みかげ）」から、17kmほど先にある山梨県道志村の「月夜野（つきよの）」までが、三56系統の全区間となっている。三ヶ木と月夜野……なんとも響きの良い組み合わせだ。
■まったり乗れる鋭い細さ
神奈川県と山梨県が背中合わせになっているエリアといえば、ほとんどが山の中である。つまり三56系統はきっと山奥へ行くバスだろうと想像できる。
山奥行き＋県境越えバスとなれば、自ずと見えてくるのが運行ダイヤの細さ。時刻表に目をやれば案の定、1日2本とシッカリ鋭く細い。
三ヶ木発は平日が7:40と12:10、土日祝が7:00と15:30。三ヶ木までアクセスする時間まで加味すると、地元に住んでいない限り朝の便をつかまえて試してみるのは、少なからず否否極論の世界が付いてきそう。
とはいえ、いわゆる終バス（と呼ぶには早いけど）に関しては、極端に早朝でも夜間でもなく、バス趣味で楽しむ分には、明るい時間帯に無理せずまったり乗れる魅力なダイヤ設定に思える。
■すばらしく狭い道のり!!
三56系統が三ヶ木を出発すると、山梨県の道志村へと続く「道志みち」と呼ばれる国道413号をメインルートに進んでいく。まずこの413号が幅のそれほど広くない道で、より一層ローカルさを引き立てる。
人の住んでいる場所が、昔から通っていたであろう旧道ないし側道沿いに集中しているのは各地でよく見られる風景で、三56系統が走る区間もほぼ同じ要領。
路線バスは需要のある場所を通るのがお約束ゆえに、ちょくちょく国道を外れては民家や商店などが建ち並ぶ側道へと入る様子が、乗車中に観察できる。
この側道がなんともいい感じの狭さを見せており、約60人乗りの路線バス級の車を着実にコントロールしていくプロの技には感服しきりだ。
さらに、連続プチ峠とでも言おうか、曲がりくねったアップダウンを繰り返す激セマ区間も経路に含まれており、狭隘路線LOVEな向きには走行シーンの素晴らしさに端から端まで目が離せない。
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