海外更新には国や地域によりハードル!
日本の在外公館では、有効な旅券の有効期間が1年を切っていれば更新ができる。これ自体は大きなハードルではない。しかし問題は渡航先のルールだ。無査証で入国できる国や地域が多いとはいえ、その条件は異なる。
たとえば無査証でも構わないが、旅券の有効期間が1年以上残っていないと駄目だという国や地域では、そもそも1年を切った旅券では入国できないので更新どころではない。航空機にすら乗せてもらえない。
コロナ以前の話ではあるが、記者が本誌取材のために鬼のような編集長から急に香港に海外出張を命じられた時には、すでに旅券の有効期間は1年を切っていて、しかも都庁で旅券を更新する時間的な余裕もない。
香港の入国には問題はない(香港では滞在日数+1カ月間の有効期間があればよい)のだが、帰国後の渡航予定もあり出張がなければ東京で更新するつもりだったので、大急ぎで香港の日本総領事館の場所と必要書類を準備して香港に飛んだ。
旅券更新の実際は?
香港では有効期間が1年を切った「TH」の旅券で入国した。その足で空港バスに乗り、バスの撮影をしながら乗り換えなしで日本領事館のあるビルに到着した。開館時刻まで待って46階の総領事館で旅券の更新である旨を伝えて中に入る。
ビルの1フロアではあるが外国公館なので、中は香港の法律は適用されず、極論は日本国内と同じ扱いだ。窓口であらかじめそろえておいた申請書類と写真に手数料を添えて提出する。受理票が交付されるので大切に保管する。実はここからが大変なのだ。
外国にいるのに手元には有効な旅券はなく、領事館発行の紙切れ1枚だけだ。旅券が発給されるのは3営業日後と国内よりもかなり早いのだが、現に外国にいるのに日本国籍を証明するものが何もないというのは不安この上ない。
香港からはバスでもフェリーでもマカオに行けるし、電車で深セン手前のボーダーまで行けば徒歩で中国に、いずれも無査証で入れる。しかし手元に旅券がないのではマカオや中国はおろか、香港を出ることすらできない。要するに3営業日の間は香港から一歩も出ることはできないのだ。
新しい旅券には入国記録がない?
香港は比較的自由な土地柄だったので、外貨両替時も宿泊時も旅券を提示することなく旅券のコピーや領事館発行の受理票で何事もなく事は運んだ。そして領事館で待ちに待った旅券の発給を受けて香港に入国した。
「TH」旅券は御役御免で無効化処理され返却。新たな「TZ」旅券が日本国籍を証明する公文書となった。
ここで一つの疑問が出てきた。香港は入国証印(スタンプ)はなく別紙が発行されるだけだが、いずれにしてもTH旅券で入国しているので入国証明書のような紙片にもTH旅券の番号が印字されている。
さて香港を出国する時にはすでにTH旅券は無効になっているため使えないし、TZ旅券は香港で発給されたので、香港当局には入国記録はないはずだ。これで帰国時に香港を出られなければ一大事だ。
そこで向かったのが香港の出入国管理当局だ。滞在延長などのために多くの外国人がひしめく中でようやく記者の順番が回ってきて、つたない英語で「香港の日本総領事館で旅券を更新したために、新しい旅券に変わってしまったが入国証明書の紙片を発行替えしなくて大丈夫か?」という趣旨のことを尋ねた。
非常に親切な女性の担当官は要旨「紙片をなくしたのであれば再発行することもできるが手数料がかかるのでおススメはしない。旅券が新しくなったのであればそのままで問題ないし、心配であれば古い旅券を添えて出せば出国できるので安心するように」との説明を受けて胸をなでおろす。
事実、その足で中国側の深センに渡ったが問題なく香港を出国できた。もっとも深センから戻る際には新しいTZ旅券で入国するので日本に帰国するには全く心配する必要はなかった。