■セッションスタート! でもタイム短縮は御法度
点呼が終わるとセッション開始。フォーメーションラップからのスターティンググリッドという感じで、回送して始点のバス停へ向かいます。ちなみにバスの営業運行時は「実車」、移動のための運転は「回送」と言います。
セッション中はタイスケに合わせてスティントを消化していきますが、路線のコースはスプリント的なショートもあれば、1時間以上のロングもあります。
セッション中に気をつけたいのが、安全運行もそうですがバス停の時刻。発車時刻より1秒でも早く発車するとレギュレーション違反となります。タイムを縮めるなど言語道断。下手をするとマシンのナンバー取り上げのペナルティとなります。
ちなみに遅れた場合のペナルティはありません。コースの中には、法定速度のまま走ると早発するようなセクターもあり、閑散としたバス停をあえて遅発させるなど、頭の中で考えながら戦略的に走っていきます。
■一番大事なのはやっぱりファンサービス
スティントの間には休憩時間があります。この休憩時間も様々で、折り返し待ち30分というのもあれば、一旦勤務を解放して5、6時間の休憩を挟むこともあります。休憩中は基本的に自由。帰宅して寝ても全く問題ありません。
こうして定められたスティントを消化したらチェッカー。パドックにバスをとめ、点検して再度アルコールチェックを行えば1日の終了です。
実際、1日の運転時間は5〜6時間ほど。規定の労働時間は約8時間ですが、レーシングドライバーと違って、時間いっぱいまでハンドルを握るわけではありません。ただ、ドライバーの人手が足りない時はそれ以上走ることもあります。もちろんギャラも割増です。
基本的には運転をすることが路線バス運転手の仕事で、ギャラのすべてはそこから発生しています。レーサーと違いスポンサー向けの営業や、空いた時間でデスクワークもありません。タイム・イズ・マネーで無駄なくギャラが算出されています。
しかし、私はただ走っていれば良いとはまったく思っていません。接客業である以上、ファンサービスは必要です。あいさつはもちろん、足の悪いお年寄りを手助けするなど、それ自体はギャラには含まれませんが、自分ならではのMyサービスを展開するのが公共交通の使命でもあります。
ある日、手助けしたお年寄りの方が感謝の意を伝えてくれたことがあります。涙が出るほどうれしかった……。これこそが私の「表彰台」だと実感しましたね。
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