あの美声の持ち主はいったい? バス車内放送のレジェンドにその大変さを聞いてみた


 移動中のバスの中では、停留所やその周囲の情報が流されている。これはバスに搭載された装置に録音されているものが、この声の主はどんな人なのだろう。またこれを収録するには独特の苦労やノウハウがあるに違いない。そこで、今回は気になる車内放送の「中の人」に迫ろう!

文:古川智規(バスマガジン編集部)

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昔はテープ今は半導体

 ワンマンバスになくてはならない自動放送は、ナレーターやアナウンサーがが肉声をスタジオで録音してそれを流すのが基本だ。昔は路線ごとに順番に収録したテープを1台のバスに複数本積んでいて、運転士が差し替えることで対応していた。

マスターはオープンリールテープだった

 ランダムアクセスが不得手なテープは基本的に順に再生するしかなく、放送ボタンの操作を間違えて前後の停留所案内が流れてしまうということはよくあった。あきらめた運転士は肉声の放送で対応していたことも少なくなかったという。

 バスのテープは基本的に8トラック磁気テープが使用されていたが、コンパクトカセットテープを使用していた交通機関がある。昔の新幹線電車である。話はそれるが、一般のコンパクトカセットテープ4本を車掌室にあるカセットデッキに入れて、その4本の音声を巧みに自動で組み合わせながら日本語と英語の放送を行っていた。

8トラからデジタルへ

 バスでは8トラ時代も現在のメモリーカードから読み取るデジタル時代になっても、ナレーターの肉声が収録され、細かく切ったフレーズをつなぎ合わせる「音声合成」という点では変わらない。ランダムアクセスが容易なメモリーカードならば、データさえ入れておけば順序はさほど重要ではなく、指定のフレーズをバッファに先読みして自然な放送として流すことも可能だ。

現在では半導体にデータを書き込む

 しかし現在主流になりつつあるのは「音声合成」ではなく「合成音声」の技術だ。似て非なるこの合成音声は要するに機械音声のことで、歌わせれば一流のあのボーカロイドや、昨今商標で問題になった棒読みのアレと同じ仕組みだ。

それでも多い肉声収録

 今では合成音声でも肉声と変わらないクオリティなのだが、それでも肉声の音声にこだわる事業者は多い。やはり温かみのある声や安心感のある声で乗客に心理的な影響が多少なりともあるからなのだろう。

収録は現在でもスタジオで行う

 最後に、「バスマガジン」本誌が2018年に特集したバスの車内放送のページでベテランナレーターの岡本洋子さんにインタビューしていたので、当該記事から抜粋する。

合成前提の大変さも!

 ――車内放送の担当を初めてどのぐらいですか?
「1982年に初めて来ました。ですので、キャリアは37年になりますね」


――はじめたころの収録の様子はいかがでしたか?
「朝10時から夕方5時まで、お昼休みを除いて話し続けました。読み上げる量が多いので、事前確認している時間がなかったので、収録本番時に初見で収録に臨んでいました。

岡本さんの収録風景

 音声合成システムが登場してからは、車内放送のCM部分や停留所が変更になったりしたときだけ、その部分の修正(再収録)となりますので、事前確認できるようになりました。ただ、20年ぐらい前に収録した私の声がいまも使われることになりますので、再収録した時と声があまり変わってしまうと違和感も出てしまいますので、できるだけ同じ感じで収録するようにします」

 ――実際バスの車内でご自分の声を聞いたことは ありますか?
「よくありますよ。スタジオ内で発生している時と、バスの車内で聞く自分の声では違うように聞こえてきます(スタジオとバス車内では環境が異なるため)。嫌だなあ、下手だなあとか、自分と思っているのと違うとも感じることがあります。初めて乗った路線では乗客のみなさまも、どこで降りたらよいか注意して聞いているので、わかりやすくということを心掛けて収録に臨んでいます」

調整室で総合的にチェックされる

 岡田さんは最後に、「自分としては声の中に“やさしさ”というものを思いながら話しているので、それが伝わり、聞いてくださる乗客のみなさまが温かみを感じていただけるように…」とし、さらに「昔入れた声と今の声が変わらない限りはこの仕事を続けていきたい」と語ってくれた。

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