後継車種が登場しない!? 選択の幅が限られていくバス車両

■路線バスもられた車種に

自家用送迎から近距離高速まで幅広く活用された路線タイプ前扉スタンダードデッカー 災害時の鉄道代行バスとして広島県に出張した京都バスの日野2007年式PJ-KV234N1
自家用送迎から近距離高速まで幅広く活用された路線タイプ前扉スタンダードデッカー 災害時の鉄道代行バスとして広島県に出張した京都バスの日野2007年式PJ-KV234N1

 路線バスでも同じような声が聞こえてくる。三菱ふそうが中型路線バスMKを2017年に製造中止した。これによって中型路線バスの選択肢はジェイ・バス(いすゞエルガミオ・日野レインボー)のみとなった。

 その前年の2016年にジェイ・バスの中型路線バスはモデルチェンジが行われ、設定はノンステップバスのみとなった。大型の場合は三菱ふそうエアロスターにワンステップバスの設定が残されているが、中型路線バスを購入する場合、ノンステップバスしか選択肢がなくなったということである。

 ノンステップバスは社会の要請であり、実際にノンステップバスでは走れないというロケーションはほとんどないと言ってよい。とはいえ、特に冬季に積雪、凍結のある地域のことを考えると、必ずしも一面から見ただけの議論ではないようにも思う。

 冬季の北海道・東北など降積雪地においては、路面の状況がかなり悪化する。また除雪して雪が路肩に積み重なるため、バス停に寄せるのも通常時とは異なる。そうした状況下で北海道のある路線バスドライバーが言う。

 「ノンステップバスでももちろん走れるのは事実。でも路面の傾斜やデコボコ、バス停に寄せてステップをこすらないかと気を使うくらいなら、ワンステップバスの方が安心して運転できる」

 理論は理論として、こうした現場感覚は大切だと考えられる。

 車種の問題とは別だが、現在のノンステップバスのスロープ板は三菱ふそう、ジェイ・バスともに床面に折りたたまれ、反転して出すタイプが標準。

 ヨーロッパではもう20年も前からこの方式で、ようやく日本もこの操作が簡単でスピーディーに対応できるスロープ板の時代になったと、筆者も高く評価しそれを文章にしてきた。

 しかし先般、北海道のバス事業者に入った最新のいすゞエルガに、従来型の着脱式のスロープ板が備えられているのを見た。

 もしかしたらそういうことか、と思ってドライバーに伺ってみると、やはり反転式では濡れた靴でお客さんが上を歩き、開扉中に雪や風が吹き込むとすぐに凍結してしまい、起こせなくなる恐れがあるからとのことだった。

 こうした地域性も実際に使用されるバスの仕様には大きく影響するのである。

■小型路線バスは「ポンチョ」のみ

 コミュニティバスなど小型路線バスの分野も、現在の選択肢は日野ポンチョだけになっている。

 かつて日野リエッセをベストセラーに、中型ベースの2扉7mワンステップ・ノンステップ、狭幅の三菱ふそうMEノンステップバスなども普及したが、2011年にリエッセと日野HR7mが製造を中止したのを最後に、このクラスは日野ポンチョを残すのみとなった。

 よくコミュニティバス運行自治体からは、独占だからポンチョは高いという声が聞こえる。

 筆者はポンチョが相当な工夫をし、工数のかかる製造工程を経てこのサイズでのバリアフリーと扱いやすさを実現した車両だと評価しているので、決して高すぎるとは個人的に思っていないが、行政サイドで選択肢がないことが問題視されやすいのもわかる。

 ポンチョはリエッセとはホイールベースや重量が異なるので、一択となったことでコミュニティバスのルート変更などが必要になったケースや、基本的にポンチョは長時間乗車を想定したつくりではないので、これまで前扉のリエッセやMJなどを使っていた路線のバリアフリー対応に苦労するケースなど、小型バス使用路線が変化を余儀なくされている。

 また大量にリエッセを保有していた事業者は価格差があるだけに、今後の更新計画に頭を悩ませている。

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