■道路事情や乗客の問題もあるのだが…
タクシーに乗るために手を挙げて止める場合、都心部ではガードレースが切れているところはバス停か交差点くらいしかない。しかし、この両方とも本来はタクシーの乗降はできない。具体的には交差点や横断歩道から5メートル以内の場所、バス停から半径10メートル以内は駐停車禁止なのでタクシーでも乗降はできないのだ。
ガードレールがきっちりと設置されている都心部の場合は事実上、流しのタクシーを止める場所は交差点付近しかないので仕方がない面はあるものの、乗客を探しながら走る流しのタクシーが右車線からいきなり交差点に突進していき急停車して乗客を拾う行為はよく見る光景だ。
この時にバスの前を横切られてすぐ先で停車されると、幅があるバスは急ハンドルを切って右に出るか、急ブレーキで止まるしかない。どちらも危険な行為なので絶対にやりたくはないが、追突するまで待つ運転士はいないのでフットブレーキで止まろうとする。
タクシーとは次元が異なる強力なフルエアブレーキで止まれる可能性は高いので交通事故は回避できるかもしれないが、急ハンドルや急ブレーキにより車内事故が起これば人身事故扱いですべては運転士の責任になる。車外での交通事故ではないので当該タクシーは知らんぷりして走り去っていくのが当たり前で、事故を起こしたバス事業者と運転士が責めを負うのもバスがらみの事故報道を見ればお分かりだろう。
この行為は、バスに限らず左から自転車や二輪車が来ていても見ていない場合が多く、タクシーがそれらと衝突してしまう事故も多い。完全歩合制が多いタクシー運転手としては、ワンメーターでも死活問題だろうから収益構造を考えると理解はできるが、事故を起こしてしまえばそれらの「水揚げ」も無駄になってしまうので来ない「だろう」はやめて、とにかくよく見てほしい。
これについても元タクシー運転手に聞いてみたところ、乗車は仕方がない面はあるがあまりにも急ハンドルで向かわなければならない場合は通過する(要は乗車不可能なので事実上の乗車拒否)か、交差点を避けて停車してお客さんが歩いてやってくるのを待つかだそうだ。また降車地に交差点を指定された場合は、駐停車禁止である旨を告げてその前後どちらを希望するかを尋ねるのが大方のルールなのだそうだ。
■バス運転士側の問題もある
バスが要因の事故として多いのが、オーバーハングを見誤ることに起因するものだ。一例を挙げると、バス停の後ろに駐車車両がある場合、斜めにアプロ―とすることは前述した。この際にバスを道路に平行に止めようとしてハンドルを右に切ることがある。
ところがバスのタイヤは前輪は運転席の後ろにあるし、後輪の後ろには車体がまだある。右にハンドルを切った場合は、後輪より後ろの車体がハンドルとは逆の左側に出る。これをオーバーハングという。
この距離を見誤ると、駐車車両にバスのお尻が当たって事故になるのだ。このオーバーハングする(はみ出てしまう車体後部)はバスの全長やホイールベースの違いにより若干異なるものの路線車で約70㎝とされており、バス運転士の見誤りによる事故はこれによるものが多い。
大型免許(実際は中型以上)や二種免許で深視力の試験があるのは、遠くの距離感を正しくつかむためで、後退時もそうだがオーバーハングの見誤りも思い込みや深視力によるものが多いのだろう。
割合としてバス停の前後に駐車しているのは乗用車でも貨物車でもなくタクシーであることが多いので、タクシー相手の事故が多い要因になっていると思われる。
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