自動車に付いている各種装置の中で、それほど活躍の場がない(ほうがいい)のが牽引フック。路線バス用の車両にも当然フックが設けられているが、メーカー車種を問わず「フックはこの位置に設置しないとダメ!」のような決まりはあるのだろうか?
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、バスの牽引フック周りの写真があります)
■牽引フックはどこにある?
クルマの牽引フックといえば、突然の車両故障で自走できなくなった際に、近くの修理できる場所まで他の車に引っ張ってもらう、もしくは壊れた車を引っ張るための装置だ。
あくまで応急措置で使うもので、使用は平坦な道に限られ、スタックした車両に対しては大変危険なため使用しないよう、日本自動車工業会や国土交通省などでも周知している。
牽引フックの装備は必須ゆえ、日本製のディーゼルエンジン(ハイブリッド含む)で走るバス車両にも、当然どこかに前後それぞれ1個は付いている。ただし「絶対にこの位置に取り付けないとダメ」といった決まりはないようだ。
あまり使わない装置なので、車種によってはカバー等で隠れていて、普段は見えないものもあるが、バスの場合はバンパー周り、もしくはバンパーの下、ヘッドライトの隣が牽引フックの定位置になっている。
ちなみにバス車両向けの牽引フックの許容荷重は、縦方向に4,000kgまでが一般的。
■左か右かの問題
さてそのバスの牽引フック、バンパーのあたりにあるのはOKとして、問題は車両を正面から見て左側に付いているのか、それとも右側か……あるいは真ん中なのか、ポジションが気になってくる。
さらに、「このメーカー製バスは必ず左」のような、メーカーごとに指定(好み)の取付位置があるのかもチェックしておきたいところだ。
ここでは中型/大型路線車の中から18種類をサンプルに、前面に付いている牽引フックの位置が左か右かをチェックしてみた。結果は以下の通り。
【左右どちらにもフックが付いていた車種】
・富士重工 5E(1980年代)
【フックの取付位置が右側だった車種】
・日野 P-HT235B(1980年代)
・三菱ふそう エアロスター(1980年代)
・いすゞ キュービック(1980〜90年代)
・いすゞ ジャーニー(1990年代)
・日野 ブルーリボン(1990年代)
・いすゞエルガ(2000年代・富士重工車体架装)
・日野 レインボーHR(2000年代)
・日野 ブルーリボンシティ(2000年代)
・三菱ふそう エアロミディ(2000年代)
・日産ディーゼル スペースランナー(2000年代)
【フックの取付位置が左側だった車種】
・日野 ブルーリボンII(2000〜2010年代)
・いすゞ エルガ(2000〜2010年代)
・三菱ふそう エアロスター(2000〜2010年代)
・いすゞ エルガ/日野 ブルーリボン(2020年代)
・いすゞ エルガデュオ/日野 ブルーリボンハイブリッド連節(2020年代)
・いすゞ エルガミオ/日野 レインボー(2020年代)
・三菱ふそう エアロスター(2020年代)
■割とバラバラか!?
上記の結果を踏まえると、中型/大型路線車で牽引フックが中央に付いている車種はひとまずなく、「このメーカーなら必ず右!」のような法則性もあまり見られないようだ。
まだシャシーとボディを別々に作る慣習が続いていた時代に登場した、2000年代初めのいすゞ エルガを例にすると、標準車体は左側であるが、富士重工製車体は右側。
牽引フックの左右取付位置は、どちらかと言えばシャシーよりも、載っている車体の性質によって決まるのかもしれない。
1980年代まで遡ると、富士重工5Eのような牽引フックが中央のナンバープレートを挟んで左右に1個ずつ取り付けられている、なんとも頼もしい例まで出てきた。
ただし、1980年代にはバス事業者の好みによって、同型車種でもそれぞれが別物と呼べるような、さまざまなバリエーション展開があり、今回のサンプルに使用した個体は事業者のオーダーによってダブル牽引フックになっていた可能性がある。
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