高速バスマーケティング研究所(横浜市、成定竜一代表)がこのほど、「『新型コロナウイルス感染症』危機以降のバス事業ロードマップ」を公表した。
必要な人のために運行を続けたい高速バス。コロナ後のいわゆる「出口」はどのように設けるべきなのか。専門家の意見を紹介しよう。
文:バスマガジン編集部/写真・図版:高速バスマーケティング研究所
コロナ収束後を視野に入れて活動再開
新型コロナウイルスの感染拡大で、バス業界は大きな影響を受けた。貸切バス、高速バス事業者は2月ごろから順次、ほぼ全面的に休業、運休に追い込まれた。
路線バスは、4月以降、外出自粛により輸送人員が急減するなかでも地域公共交通という役割から大幅な運休も困難で、多くの事業者で赤字運行を余儀なくされた。
一方、5月14日には多くの県で「緊急事態宣言」が解除されるなど、事態に動きも見え始めた。そこで、バス事業者向けにコンサルティングを手掛ける同社が、「緊急事態」から「収束」までの間にバス事業者が対応すべき課題を事業分野(路線バス/高速バス/貸切バス)別に整理したのがこのロードマップだ。
ロードマップでは、危機収束までの道のりを「緊急事態フェーズ」、「制御フェーズ」、「新常態フェーズ」に分けている。「制御フェーズ」とは、一定の範囲で社会活動、経済活動が再開されつつも、一部業種の営業やイベント開催の自粛が続くなど制約が残る状態。
今後の社会変化にバスはどう対応すべきか
通勤通学や出張などの需要は回復途上で、旅行需要は海外や遠方を避け近場の目的地から回復するとする。また、「緊急事態フェーズ」に戻るリスクを常に意識する必要があるという。
治療薬が安定供給されるなどすれば「新常態フェーズ」に移行するが、完全に元の社会に戻るわけではないと予測している。社会活動や消費者心理は平常に戻るとしても、テレワークやウェブ通販活用など自粛期間中に根付いた習慣が一部定着する。
例えば、全員が在宅勤務とまではいかなくとも、「担当業務の内容や当日の業務予定によっては在宅勤務」、「勤務時間が柔軟になり時差通勤が定着」といった社会がくるだろう、という予測だ。この辺かは、当然、路線バスの需要変化に直結する。
ロードマップでは、事業分野ごと、収束フェーズごとに、バス事業者が対応すべき項目が列記されている。どの分野、フェーズでも、「安全な運行(乗客や乗務員への感染防止)と安心の提供(感染防止策の可視化)」を大前提としつつ、雇用維持、運行、マーケティング、国や自治体への要望などについて具体的なタスクを列記している。
同社公式サイトで公開中。すでに、このロードマップを元にして、自社独自のロードマップづくりを始めたバス事業者もあるという。
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