コロナの影響や物価高、運転士不足により急激に環境が悪化しているバス業界。その影響から運賃の値上げを決断する事業者も出てきている。
だがそれだけでは需要の掘り起こしにはならないと判断したのか、西日本鉄道がやりすぎともいえる大盤振る舞いキャンペーンを始めた。なんと学生向けに1カ月乗り放題キャンペーンを実施するのだ。しかもタダ! 一体どんな内容なのか!?
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
お試しで定期1か月分が無料!
西日本鉄道(西鉄)は、福岡市内を中心とした学生向けのフリー定期券(エコルカード)をお試しで1か月無料で使える「お試しエコルカードキャンペーン」を実施中だ。学生向けなので社会人には無縁なのかもしれないが、学生を持つ親世代には1か月分の通学交通費のプレゼント同様の大盤振る舞いだ。
通学のみならずアルバイト先への交通費や友達とのちょっとしたお出かけ、お買い物にも使えるエコルカードは学生の強い味方だ。理由は広大な路線網を持つ西鉄の路線バスであれば乗り放題。
西鉄バスは多少の距離であっても都市高速で都心部からワープする路線を数多く持っているので、路線バスとはいえ使い方によっては便利この上ない。
この便利な路線バスを利用してもらおうと西鉄が発売しているのが学生専用のエコルカードだ。券種は3種類あり、福岡市とその周辺のみ有効なエコルカード。さらに周辺エリアまでを含めたワイドエコルカード、それに飯塚や田川方面への筑豊特急バスにも乗れ筑豊地区をほぼすべてカバーする筑豊エコルカードだ。
それぞれの発売額は異なり最も広範囲に使用できる筑豊エコルカードが最高値だ。これら3券種すべてが1か月無料でお試しできる。
購入したことがない学生が条件だが……
お試しの対象者はエコルカードを購入したことがない大学生・短大生・専門学校生と、その他指定学校在学者だ。高校生は対象外のようだ。
比較的時間があり移動が活発な若い学生にバスを利用してもらえば、近い将来になるだろう社会人でも抵抗なく引き続きバスを利用してもらえるという判断もあるだろうが、学生を持つ家庭への西鉄からの実質支援でもある。
長期的な戦略で見ると、若い世代にバスを利用してもらい、さらに将来も利用し続けてもらう、いわば顧客を育てる手法であろう。これほどの大盤振る舞いは企業体力がないとできない方法だ。
若者が移動してバイトで収入を得て、また移動してどこかで消費すれば、バスでお金は落ちなくてもその経済圏での消費で最終的に西鉄に還流する。福岡県内に広大な経済圏を構築している西鉄ならではの損して得取るWinWinなキャンペーンとみることも可能だ。
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