■広島駅電停の様子
次に向かったのは広島駅電停である。筆者も広島に着くと当地から路面電車に乗った思い出がある。ここから乗ることが当たり前になっていたが、それも今日で終わりだ。乗り場となる屋根下には「ありがとう広島駅・猿猴橋町電停」と書かれた垂れ幕が、その周りには多くの感謝を伝える書き込みとともに吊るされ、最後日の飾りとして添えられていた。
筆者のような最後の日の電停を見に来た人はもちろん、いつものように通勤などで利用する人たちも垂れ幕を撮影していた。そして上を見ると明日から運用の始まる高架が控えており、試運転が繰り返し行われていた。そして先行して開業した商業施設「minamoa(ミナモア)」の中からも広島駅電停が見渡せるので同時に見てきた。
これまでは俯瞰で見ることはできなかったので、非常に貴重なアングルだ。また中央のアトリウム空間と呼ばれる吹き抜けからは新広島駅電停を見渡せるようになっており、東西をつなぐ連絡通路と左右に設けられた「雁木テラス」から路面電車の発着する様子を見ることができる。
思ったよりもかなり開放的に作られており、案内表示やホーム等の設備や架線も含めて見渡しても気にならないほどうまくデザインで処理されており邪魔にもならない感じだった。ちなみにこのテラスは3階にあるのだが、テラスから南側はカフェやレストランが入居しており、そこに入るとホーム先端のより開放的なアングルから路面電車の動きを見ることができそうだ。
また「minamoa」には屋上階もある。7階にはウッドデッキと大階段が、更にその上に行くと9階にはソラモア広場というのがあり、フットサルなどが出来る多目的コートと芝生広場があり飲食などを楽しみながらゆっくりと過ごすことが可能だ。
大階段はちょうど広島駅電停の上部に位置しており、かなり高い角度から駅前大橋ルートを一望することができる。この日は日中かなりの暑さで、座ってじっくりと楽しむには厳しい環境だったが、路面電車が行き交う姿はなかなか見ることのないので名所になりそうだ。
■駅前大橋ルート
次に明日から運用される駅前大橋ルートを見に行った。試運転の車両が行き来し、まだ開業前なので電停の表示は隠されていても準備万端という感じでだった。専用軌道で軌道敷きに沿って仮設ガードが並んでいるのがまた工事中という雰囲気だった。
広島駅電停を出た路面電車は高架を下り、最初の電停となる稲荷町へと向かう。この交差点は現在は広島駅電停から来た路面電車と紙屋町電停から来た路面電車が東西を結んでいるが、明日からは駅前大橋ルートで北からやってきた路面電車がここで紙屋町・宮島口方面と比治山下・広島港方面へと分かれていく分岐点になるので行き交う姿は一変する。
■そして定期と貸切の最終電車は出発した!
日が落ち夜になると広島駅電停の周りには徐々に人が集まりはじめ、最後の電車が発車するその時を見守っていた。ホームの周りはもちろん、駅ビル3階のデッキから、またその先の交差点から猿猴橋町電停を過ぎて猿猴橋までぎっしりと人の壁が出来上がっていた。
23時過ぎの定期の最終電車が出た後にホームではセレモニーが行われた。広島電鉄会長による挨拶に続き、運転手へ花束の贈呈が行われた。そして事前に募集した100人の乗客を乗せて特別貸切電車「ありがとう広島駅・猿猴橋町電停号」が23時30分に出発し、これが運用上の最後の電車になった。遂に広島駅電停から最後の路面電車がここに戻ることなく離れていった。
同じく猿猴橋町電停でも挨拶が行われ拍手で見送られた。最終電車がいなくなると、セレモニーの片付けと共に電気も落とされ工事の準備が始まった。通常最終電車が出るとホームの電気は消されていたのだと思うが、この日に関してはもう再び電気が点くことはないので、なんとも寂しい気持ちだ。
猿猴橋町電停では工事車両が入り多くの作業者が早速電停の封鎖と横を走る道路の標示を消す作業に従事していた。まだまだ多くの人が名残惜しそうに写真を撮る中で、明日もまた早くからの行動になるため、筆者はホテルへ戻ることにした。
新電停開業当日の模様は稿を改めてお届けする。
【画像ギャラリー】広島駅の中に路面電車が!広島電鉄の新しい広島駅電停開業前日レポート(21枚)画像ギャラリー
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